全ては測ることから 株式会社興和設計工務事務所
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ご応募ありがとうございました。
『きちんと、測る』。
これは、これから紹介する会社がモットーにしていることです。
この言葉は、測量という仕事において、当たり前のことかもしれません。でも、正確な数値を出せばいいというだけではなく、そこにはたくさんの意味が込められています。
「ただ測って出すだけじゃなくて、お客さんにとって分かりやすくて使いやすいデータであるか。そんな相手に対する思いやりがあって初めて『きちんと、測る』なんです」
測ることを仕事にする測量士たちは、ただ数値を測って出すだけではない。彼らが作るデータには、一緒により良いものを作りあげるための、単なる数値ではない大切な思いやりや気配りが込められています。
今回は、そんな大切な数値を測る『測量士』を募集します。
測量と聞くと、空き地などの土地を測る姿を想像するかもしれませんが、墨田区千歳にある『株式会社興和設計工務事務所』が主に手がけるのは、橋梁架設測量・既設橋梁調査。
事業の6~7割が橋を架けるための測量で、50年以上の実績とノウハウを持ち、東京湾アクアブリッジやレインボーブリッジ、横浜ベイブリッジといった橋もこの会社の仕事です。
機器で角度と距離を測りながら、橋梁だけにとどまらず、道路・河川・港湾・ダム・鉄道・下水道といった公共事業のインフラの整備や維持管理、改修といった非常に重要な作業を担っています。一般的な建物や土地の測量も行うが、多くは一般の人が目にしにくい場所での測量が多い。
「一般の人からすると分からないと思います。測量って何やるの?って言われてもやってる人間ですら、幅が広くてうまく説明できないですから」
そう語るのは、社長の浦 恒博さん。
「社長になって、測量とはなんだろうともう一度考えてみたんです。理屈的に説明すると、ある一点があると、一点だけだと何もならない。でも、二点以上になると位置関係や相互関係が出ます。その関係を明らかにするのが、この仕事だと思います」
測量の仕事は、基本は現地で位置や長さを測り、物事の位置関係や相互関係を明らかにすること。また、設計データを元に現地で形や状況を分かりやすくお客さんに示す、これも測量の仕事です。
浦さんがこの会社に入社したのは、奥さまの実家だったことがきっかけでした。それ以前も、親戚の測量会社で働いていましたが、しがらみのないところで働こうと退社を決め、義父である先代社長に報告をしに行ったところ、会社の立て直しを行っていたのもあり、今から15年前に入社。
9年前に先代が亡くなられ、2代目として後を継ぐことになったそうです。
「会社に入った時から継がなきゃいけないというのは、多少なりとも覚悟はしていました。でも、引き継ぎの最後の半年間は、実務と社長代理の仕事との兼務がものすごく大変でしたね」
何かを作る。そこには、必ず測量という仕事の存在があります。
例えば、道路を通すとなると何もない構想から測量が入り、計画図を作るところも測量の部分です。測量したデータを図面に入れるのも、工事に使う部材のサイズの指定や、保証や立ち退きの部分もそう。工事の途中でも位置管理をしたり、最初から最後までそこには必ず測量の仕事があります。
その一方で、機械が便利になったことで、測量士に頼まなくても工事会社の内部スタッフで簡単な測量ができるようになり、以前に比べると仕事は減りつつあります。しかし、スピーディーで正確な数値を求められる現場において、やはりプロの仕事が欠かせないのも事実としてあり、もっと我々を使って欲しいと、隣で話を聞いていた専務の角田さんは言います。
「うまくごまかして終わる仕事じゃないからね。現場でちょっと測り間違えたまま、物を持ってきて入らなかったらそこでおしまいですからね。だから、この仕事は真実だけを出していくしかない仕事なんですよ」
穏やかな口調でそう語る角田さんは、この会社の生き字引のような存在です。
それもそのはずで、お話を聞くとこの会社に入社したのは47年も前のこと。
20歳の頃からずっと測量士として活躍されてきたそうです。
角田さん曰く、創業当時この会社は茅場町にあり、最盛期には100人ほどの従業員が働いていたと言います。その後、墨田区へと事務所が移って30年になるそうですが、今では14人まで縮小しました。
「私がこの仕事を始めた頃は、パソコンがなくそろばんで、一日現場に出たら一日内業をやんないと計算が追いつきませんでしたよ。今では機械が記録してくれるので、USBに取り込んでソフトに落とせばすぐに計算してくれるようになりました」
角田さんの言う内業とは、計画・計算・製図等の作業をすることを指し、現場で測量をした後、事務所に戻って必ず行う作業で、現場が終わるとみなさん戻ってこれを行うそうです。
現場での仕事も、昔と今では変わりましたか?
「そうですね。昔は、巻き尺のテープで測って手書きしてましたから。橋だとテープじゃ足りずピアノ線で距離を測ってましたよ。今じゃ1kmでも測れるし、GPSもあるので空さえひらけてれば測量できる時代。信じらんないですよね」
経験豊富な角田さんでも、若い頃は失敗をしたこともあったそうです。
「若い頃、基礎をちょっと間違えたりはありましたね。そういうのは誰でもありますよ。失敗は仕事でまた取り返せばいいんですよ。それよりも信用ですよね。10年は10年の信用、20年は20年の信用で、いくら10年かかる技術を3年で覚えたって、信用は10年かかりますから。何十年も続けるってそういうことですよ」
興和設計工務事務所には、営業職はありません。現場担当者の仕事をする姿を見てもらうことが結果として営業へと繋がってきました。
今でも橋梁の多くのお客さんを長年現場に出ていた角田さんが抱え、簡単には引き継げない長年築いてきた信頼と実績がそこにはあります。こうした仕事や信用も次の世代へと繋いでいくことも、今後の課題だと言います。
一言に測量と言っても、実はその中でも幅が広い。浦さんも、測量の会社に勤めて経験はあったといえ、橋梁はほとんど未経験。測るものが変わればやり方も全く違い、最初は現場へ行き橋のことを叩き込まれたそうです。
「この会社が何をしてるか正直知りませんでした。一般的な土地や宅地分譲とかニュータウンみたいな測量を専門でやってて、ぜんぜん畑が違って測量でもこんなに違うんだなと思いました。一概に測量と言っても、それぞれ専門の人がいるくらい幅が広いんです」
その当時、現場で浦さんに橋のことを教えてくれたのが、伊藤さんだったそうです。
伊藤さんは、この会社に入って25年目になる現場のベテラン。橋梁をメインに手がけられています。
一日の仕事の流れは、朝は7時に会社へ来て使う道具の準備。それから作業現場へと車で向かい、8時から開始して17時まで。18時頃には会社へ再び戻り、それからその日の内業のための準備を行うといのが、おおまかなスケジュールです。
伊藤さんに、どんな人と働きたいかを伺ってみると、即答で『辞めない人』ときっぱり。
これまでにも測量士を目指す若手はいたそうですが、続かない方も多くいつの間にか伊藤さんと下の人では、キャリアに10年ほどの差ができてしまったそうです。
仕事をする中で、どんなときが大変ですか?
「どんな仕事でもそうだと思いますが、工期に間に合わないならやらなきゃいけないので、作業時間が長くなることもあってその時はきついですよね。時間に追われますが、適当な仕事もできないですし」
測量をした翌日にはデータをお客さんは期待されていることもあり、そうするとどうしても現場から戻って急いでデータをまとめて送る必要があり、帰りが遅くなることもあるそうです。
この仕事のやりがいはなんでしょうか?
「作ることじゃないですかね。橋梁だと自分が携わった橋の上を通る時に、この橋やったなって思えること。あと、一般の人には何やってるか分からないと思いますが、仕事が終わった後にお客さんからお礼の電話とか、うまくできましたって言ってもらえた時はうれしいですよね」
伊藤さんと一緒に現場を回っていた頃のことを、浦さんがこんな風に話してくれました。
「一緒に回った時は、とにかく全てが早くてびっくりしました。現場はのんびりなんて歩いてられなくて、やっぱり人より歩くスピードは早いです。そこで時間も変わるので、そういう判断も彼は早いです」
現場は、関東近辺が中心で遠いところは山梨や福島のあたりまで。基本的には日帰りが多いですが、スケジュールや100km以上ある遠いエリアに関しては、泊まりになることもあります。
測量器が入った重さ5kgほどのアタッシュケースを背負い、測る人と2つの基点になる場所に立つ人の3人が必要で、基点までは橋ができるであろう場所を目指し、山を登ったり降りたりしなければいけません。
「歩くし登ります。日陰がなく夏場はしんどいです。橋は特にそれが多いので体力は必要ですし、高所恐怖症だと厳しいです。傾斜や崖もあって怖い時もありますが、今は柵があったりして安全にはなりましたが、どうしても危険な部分があるので、そこが測量会社の中では特殊かもしれません」
工事は通行止めをしている間に行われることも少なくない。その短い決められた時間の中でスムーズに終わらせるには、正確でスピーディーに数値を出すことが不可欠。そこには、数値だけでなく環境や気温の変化、使う素材の特性をも把握し、あらゆる可能性を考えてデータが落とし込まれています。
危険なだけでなく、失敗が許されない責任の大きな仕事ですが、この仕事のやりがいはなんでしょうか?
「責任ある仕事なので、それをどう捉えるかですよね。大変だと思うけど、それがいいかなと思います。実際に橋が架かるところを見に行くと、ちゃんと入るかなってドキドキしながら、入らなかったら逃げて帰ってこようかって思うときもあります。それも含めて醍醐味だと思います」
「それに橋が架かる瞬間に立ち会えて、自分たちの仕事でできるとうれしいですよね。自分たちが作ったんじゃないけど、最初から関わって肝心なところでも呼んでもらってやってるわけですから」
全ての始まりに携われる。そしてこの仕事なくしては、何も始まらない。
これがこの仕事の魅力なんだそうです。
「正直、儲からない仕事です。だから、給料だけで言うとすごく進められるような仕事じゃないですが、なぜこの仕事なのかと言うと、ぼくはすごい好きなんです。何かを始める時は、必ず必要で一番最初に入ります。根本にあって誰かがやらないといけない仕事ですし、測量がないと何も始まってないと思います」
「自分たちの仕事から始まり、測量があって何もないところに道路や橋ができて、建物が立ち町ができていく。まさに地図に残る仕事です。橋が架かる前は、対岸へ何十キロも回る場合もあるわけで、そこに暮らす人は生活が変わります。そんな社会貢献ができるのもすごく魅力だと思います。逆にそこがいいと思わないとなかなかできない仕事だと思います」
浦さんは、どんな方と働きたいですか?
「この仕事を魅力と感じて、生き生き話せる頑張れる子がいいですね。別にスマートに生きなくてもいいし、頭が良くなくてもいい。うちはほんと泥まみれになってもやらないといけなくて、それを見てお客さんは仕事くれるので、真面目で一生懸命さが見える人」
以前、仕事を納めた後にお客さんのところを回った際、言われたことがとても印象に残ってると言います。
「お客さんのところへ行った時に『彼が来てくれるといいんだよね』って言ってもらえたのは、すごく嬉しかったですね。いい社員を持ったなと。それが一番ですね。しっかりして欲しいと思う子でも、不器用なりに頑張ってるのが分かりますよね」
測量士になるには、国家資格を取得する必要があり合格率は非常に低い。ただ、学校を必ずしも出ていなくても試験を受けることはでき、未経験の方でも本気で挑戦をしたいという方は、この会社で働きながら資格取得を目指すことができます。
「やる気さえあれば、資格は取れます。仕事をしっかりやった上で、ほんとに勉強したければ空いてる時間でやればいいし、意欲があるなら応援はします。最初の2〜3年って絶対おもしろくないと思うんです。特に測量は測るだけなので。でも、主任になって自分でやれるようになって初めておもしろくなってきます。だから10年は続けてほしいんです」
測量士は、資格を取ってから一人前と呼ばれる主任技術者になるまで、一般的には実務経験が8年必要だと言われています。ですが、あくまでそれは書面上のこと。経験と知識が必要とされる仕事において、それ以上の経験を持つ方たちでも完璧はないと言います。
「機械の扱いはすぐにできるようになると思います。ただ、測って出てきた数字が良いのか悪いのか、正しいのか正しくないのかが、自然界を相手にしてるので、理屈通りにいかないときもあるわけです。そこにはすごい経験が必要で判断のさじ加減が難しいし、それを教えるのに説明するのも難しいんです」
「だから、自分の中で絶対に間違いないと思うことは少ないです。どの仕事でもそうですよね。測量も幅が広いので経験のない仕事もあって、過去の実績を借りて一生勉強しながらですよね。たぶん完璧になることはないと思います。だから、ぼくも分からないことの方が今でも多いですよ」
今後、測量という仕事はどうなっていってほしいですか?
「測量はなくなっちゃいけない大事な仕事だと思うので、世の中に残していきたいです。理想はもっと子供たちにも教えてあげたいし、おもしろい仕事だよって魅力を伝えていけて、社会に貢献できる会社になりたいなと思います。業界全体を巻き込む力はないけど、自分ができる範囲でできたらいいですね」
測量士として一人前になるまでは、厳しく長い道のりです。
でも、それを応援してくれる会社と仲間がここにはいます。そんな人たちと一緒に、これからも測量という仕事を守りながら、自分の仕事だと胸を張って言えるその日まで頑張ってほしいなと思います。