ストーリーを販売する セメントプロデュースデザイン
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ご応募ありがとうございました。
あなたは買い物をするとき、どんなところを見てものの購入を決めていますか?
デザイン的な部分で選ぶ方もいれば、機能性に惹かれる方もいることでしょう。
人が欲しいな買いたいなと思う商品を、つくり手と一緒に考え、そしてものができるまでの経緯や製造過程、つくり手や産地のことなど、ものの裏側にあるストーリーまでを説明し、丁寧に商品を販売しているお店があります。
東京スカイツリーのすぐそば、押上と錦糸町をつなぐ四ツ目通り沿いにある『コトモノミチ at TOKYO』。
デザインプロデュース会社『セメントプロデュースデザイン』が自社で運営する、つくり手とつかい手をつなぐフラッグシップストアです。全国各地の工場や職人と共に作った商品を販売することで、流通のひとつとして重要な位置付けで運営をしている場所です。
販売にとどまらず、企業と職人、消費者をつなぐ場としてワークショップや講演会、企画展などさまざまな活動も行われています。
現在、このお店で一緒に商品の魅力を伝えてくれる『店長候補』を募集しています。
セメントプロデュースデザインは、主に商業施設の広告プロモーションや、企業のWEBデザイン、パッケージやプロダクトデザインなどを手がけています。
他にも、企業コンサルティング業務やセミナー、講演会、OEM企画販売など幅広い事業を展開し、デザインを通して開発から流通までを一貫してプロデュースできるのが強みです。
会社の本拠地は大阪ですが、セメントプロデュースデザインは、墨田区の製造業の会社と一緒に新商品を開発する『ものづくりコラボレーション』事業にコラボレーターとして参加したのを機に、2014年から墨田区との関わりが生まれ、行政や区内事業者とのさまざまな取り組みが広がっていきました。
そして2018年に、中小企業が区内の事業者と連携して新しい製品や技術、サービスを創出する場を整備することを目的とした、墨田区の新ものづくり創出拠点事業に採択され、2019年にできたのがコトモノミチ at TOKYOです。
今も昔も、ものづくりが盛んな墨田区。所狭しと町工場が並ぶこの地域には、セメントプロデュースデザインの力を必要としている企業がたくさんあります。
今回の募集について、セメントプロデュースデザインの代表、金谷勉さんにお話を伺いました。
「当社の商品は、パッと見てすぐに用途が分かる商品ばかりではないので、海外のイベントでも必ず、来場された方に説明をします。日本の技術力の高さを感じてもらえますし、おもしろいことに海外の方は『日本にお店があるなら今度日本に行くよ』と言ってくれます。ネットで購入せず、お店で購入したいと思ってもらえるのは嬉しいですよね」
デザイン力とプロデュース力で、全国各地の製造業の人たちを伴走しながらサポートをする中で、この地にご縁あってできた『コトモノミチ at TOKYO』は、東京という立地を生かし、各地の職人や技術に触れられる場であり、エンドユーザーからさまざまな反応をもらえる場所です。
どんなに高い技術が活かされた商品も、実際に購入され使われなければ、日の目を見ることはありません。そのため、お店で得られるお客さまの声には、商品のブラッシュアップや、新たな商品につながるヒントがたくさんあるので、売ること以上に『伝える』ということを大切にしています。
お店を持たない職人や工場の方たちはたくさんいます。そうした方たちにとって、コトモノミチがフラッグシップになることを、金谷さんは目指しています。
「結果的に店舗が増えたらうれしいですが、増やすことを目的に運営しているわけではありません。店舗に重点を置いた商品開発では、お店の維持のために次第に低コストを求めるようになりますし、そうなっては本末転倒です。まずベースになる店舗をしっかりと保つことが大事だと思っています」
「当社には、オンラインショップもありますが、コトモノミチ at TOKYOでは、接客の時間を大切に、つくり手の想いを買うことで消費者が応援するという流れをつくりたい。だからこそ、自社のスタッフがしっかりとモノの背景を理解して販売するお店でありたいと思います」
続いて、実際の店舗運営について、入社4年目になる山本さんにお話を聞きました。
山本さんは、全国30店舗以上ある雑貨メーカーのブランディングディレクターとして、商品や販促、VMDなどを統括する仕事で10年ほど経験を積んできました。
出産を機に、一度は仕事を辞めた山本さんでしたが、新しいことを始めてみたいと思い、飲食業界やブライダル業界、写真業界などに挑戦しながら、自分に向いている仕事を模索していたそうです。
「旦那さんの実家の家業が水着製造事業で、そのことを改めて教えてもらったんです。クオリティの高さ、水着にかける義父、義母の想いを聞いて、ものづくりのすばらしさを知り、感銘を受けました。こんなに素晴らしい水着を作れるなら、デザイン面でサポートして新たな販路を獲得できないかと思ったんです」
それがきっかけで、自ら製造業の道に進もうと決意。家業を継がせてほしいと懇願し、そこから5年ほど縫製や生地のことを学び、ついに念願だった自分のブランドを立ち上げることになります。
ところが、ゼロから立ち上げをした山本さんには、商流に乗せる方法が分かりません。
自分でいろいろと模索していたときに、大阪産業局主催の大阪商品計画という、作った商品を日本最大規模の展示会であるギフト・ショーでお披露目まで行う、金谷さんが講師を務めるゼミに参加します。山本さんにとってチャンスを得られる講座でした。
ところがデビュー予定の2020年2月、緊急事態宣言の発令により、全ての計画が中止となる事態に陥りました。
「海やプールに行くのも御法度の雰囲気で、なにも動けなくなりました。資金を投入して2年かけて作ったブランドですから、なんとかして収入を得ていかなければと危機感を持っていました」
そんなとき、金谷さんから自社のオンラインショップでパートを募集していることを聞き、商品の梱包・発送作業でサポートをする形で関わることになりました。
その後、実店舗の計画が持ち上がり、前職で店舗立ち上げ経験のある山本さんに白羽の矢が立ちました。
「コロナ禍で収束が見えない中、80代の職人さんたちが水着の製造をいつまで続けられるのか分からない状態でした。自分のブランドが本当に持続可能かを考えた結果、事業継続は難しいと思ったんです」
「それなら、商品開発の経験やノウハウを活かし、お店で誰かに伝えることや職人さんに伝えることが、私にできることだと思いました。このお店ならば、自分が製造業で独立する以上に、もっと製造業のいろんな人を救えるかもしれないと感じたんです」
製造業の事業者から、製造業を支える人へと転換をした山本さん。
実際にお店ではどんなことを考え、運営にあたっているのでしょうか。まずは日頃どのような業務を行っているのか伺ってみます。
「基本的に店長とアルバイトスタッフで運営しています。定休日は、毎週火曜日と水曜日。主な仕事は、商品販売と、毎月実施する企画展の準備になります。商品の仕入れやプロモーション計画、店内のレイアウトのほか、新商品の販促や季節に応じた企画展の企画・運営も行います」
「運営業務としては、接客販売をしながら、インスタグラム等のSNS更新、時間ができたタイミングで毎月の企画展の企画を練っています。当社とつながりのある会社のテーマや、ストーリーをプロデュースして企画展をデザインするので、企画から運営まで全て自分たちで実施しています」
今回は、墨田区にある店舗の店長候補募集ですが、研修期間は大阪の店舗に行くこともあるかもしれません。店舗の運営業務は、基本的に店長一人で行うことになるため、現場感やセメント流の伝える接客を少しでも理解できるようにするためです。
また店舗で販売する商品は、雑貨店やメーカーとは異なり、クライアントと共に開発が行われています。そのため、より良いものづくりを追求するために、スケジュール通りにいかないこともあります。
店舗への入荷も予定を前後することがあるので、新しいできごとや刻々と変化する状況の中で、臨機応変に対応できる人が求められます。
お客さまに伝える商品の情報は、既存の商品であれば最初の研修で、産地やつくり手のこと、どんな技術が活かされているのか、どんなことに役立つものかをしっかりインプットしていきます。
既存商品に対して、新商品の販売が始まるときには、デザイナーやディレクターから直接話を聞いて、商品の魅力を確認していきます。ときには、自分で商品を使って試してみるということも、必要になるでしょう。
「全ての工場や職人さんの元へ伺い、お話を聞くことができれば理想的ですが、日々の店舗運営があると全ての地域に赴くのは現実的に難しいため、ディレクターやデザイナーとオンラインで打ち合わせをして、商品開発の経緯や想い、技術などについてミーティングをしてから販売を始めています」
「まずは売り場で接客をして、お客さまとの交流を通してこのお店のファンを作っていってほしいなと思います。ものづくりの職人や事業者へのリスペクトを持って運営しているお店なので、彼らの想いを伝えたいと思ってくれる人と一緒に作っていきたいですね」
山本さんは、月に1、2回ほどは東京の店舗にも足を運ぶそうですが、基本的には大阪の店舗を中心に働かれています。大阪のショップスタッフの接客の様子を教えてくれました。
「大阪の店舗では、お客さまに寄り添うように説明をしていて、必ずお店の目的を伝えるようにしています。ひとりひとりのスタッフが製造事業者のこと、当社の商品への携わり方などを丁寧にお伝えしています」
「オンラインショップでものが買える今、実際にショップに来てもらう意味を考えると、圧倒的な体験をしてもらいたいと思っています。来店するたびにおもしろいものや珍しいもの、知らなかったものを発見していただくことも、ものづくりそのものの魅力を発信するのも体験のひとつだと思っています」
事業者側のことを伝えるだけでなく、お客さまのライフスタイルに寄り添い、どんな場面で役立つのかを交えて提案をする。そうすることで話に耳を傾けてくれ、最終的につくり手への応援の気持ちと共に、使いたいという思いを持って購入してくれている、と話します。
店舗スタッフも店舗運営の中からの気づきを通して、商品開発に携わることもあります。山本さんが開発の一部に携わった、福井県あわら市のリボンメーカーと一緒に作った『SEE OH! Ribbon (シオリボン)のことを教えてもらいました。
「福井県は、国産のリボン出荷額が日本一のリボンの産地なんですが、意外と知られていなくて。ラッピング資材として使われるリボンにレーザー加工を施し、しおりにしたんです。第2弾の製作に関わらせてもらったのですが、第1弾のしおりは少々大きく売り場展開をしづらかったことや、お客さまの『持ち運べる小さいサイズが欲しい』という声を商品に反映してもらいました」
以前より小さくなったシオリボンは、84円切手を貼りポストに投函できるようになっていたり、オーナメントとしてしおり同士をつなぎ合わせることもできる。現場の声を聞いて使い方の幅を広げたことで、一気に注目されるようになりました。
こうした現場でもらった声をデザイナーに届けるのも、店舗運営の大切な仕事のひとつです。
「東京事務所はお店の2階にあるので、デザイナーやディレクターとの距離は近く感じます。何か商品のことで相談があればすぐに聞きに行けますし、デザイナーさんもショップでお客さまの反応を見ることもできるので、連携もしやすいですね」
東京事務所で働く、デザイナーのリーダーを務めている福森さんにも、どんな方に店舗運営に携わってほしいか聞いてみました。
「店舗にて毎月違うテーマで開催している企画展は、告知ポスターなどのビジュアルをデザイナーが制作しています。デザイナーとしても自分たちのお店である意識を常に持ってデザインにあたりたいですし、これから店長になる方とも、部署の垣根無くデザイン会社ならではの連携を図り、一緒に店舗を盛り上げていけたらと思っています」
「また、スタッフが『やりたい!』と思ったことを理由なく否定するような人はいないので、前のめりな方や自由度が高い環境を楽しめる方だとマッチすると思います」
入社後は、店舗の統括者である山本さんが指導役となり、研修から店づくりについて教えてくれることになります。
どんな人と一緒に店づくり、商品づくりをしていきたいでしょうか。
「私が目指したいのは『日本で一番語れる店員がいるお店』。店舗はお客さまの声をダイレクトに聞けるので、マーケット感覚を持つことや商品開発につながる当社にとって大切な場所です」
「店長として入社した後、企画力やマーケット感覚が身につけばショップディレクターや、商品開発のプロデューサーになれる可能性もあります。こういう商品が反応がいいんだなとか、これは売れそうだと、B to Cに直結することを実践で養える場は、店舗ならではの経験だと思います。セメント流の成長ができる場所なので、ぜひ一緒にお店をつくっていきましょう」
世の中には、商品がたくさん溢れています。その中には、しっかりとした想いや情熱をもって作られた商品があります。しかし、それらもただ並べているだけでは、価値や裏側にあるストーリーまでが伝わることは決してありません。
大切に作られた商品に足りないのは、ものの価値を分かっている方の言葉かもしれません。価値ある商品をあなたの言葉で、ぜひたくさんの方に届けて欲しいなと思います。
文章:草野 明日香
写真:Mao Yamamoto
編集:のしごと