油田採掘チームを墨田で結成する TOKYO油田
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TOKYO油田?油田カフェ?油田モール?一度聞いたら忘れることのないインパクトのある名前の施設やプロジェクトを次々に打ち出す企業が、墨田区八広にある。
ここは、天ぷら料理や中華料理を提供しているわけでもなければ、ガソリンスタンドでもない。ましてや石油が埋まっているわけでもない。廃油を回収し、VDF(ベジタブル・ディーゼル・フィーエル)と呼ばれるディーゼル車用の燃料や家畜や畑の肥料、石鹸やキャンドルとして再資源化をしている会社だ。
この再資源化をしている株式会社ユーズで、使用済みの油回収やイベント企画・運営のスタッフを募集されています。
募集職種は、その名も「エコディネーター」。エコとコーディネーターを組み合わせた造語だ。
墨田区は都内でも有数の町工場の町。
この大きな煙突の墨田清掃工場などがある、墨田区の中でも特に工場の多い地域。
八広駅から歩くこと10分ほど、大きなライオンズマンションの1階にユーズの事務所はある。
事務所の前は、大型スーパーや大型パチンコ店があり、町工場だけでなく住民も住みやすい町に生まれかかりつつあるようだ。
早速、オフィスにお邪魔しようと、ふと足元を見ると木の桶に廃油がたっぷり入ったボトルが入れてある。
「事務所が休みの日は、近所の方が持ってきてここに置いていってくださるんですよ」
と話してくれたのは、代表の染谷さん。
この地域ではユーズの活動が既に認知されており、自主的にここまで持ってきてくださる方もいるようだ。
染谷さんに、今回の募集の背景についてお話を伺った。
「エコディネーターは、名前の通りただの油回収作業員ではないです。油回収を通じて社会を変えていくことを伝えるメッセンジャーなんです。だから、回収先やイベントの現場へ行って、きちんと答えられなきゃいけないので、お客さまと気さくに話せる方を今回は求めています。」
事務所に入るとまず目に入るのは、ビタミンカラーのカラフルな壁。
キッズルームのように明るく楽しい雰囲気で、油回収のイメージとは随分とかけ離れた印象だ。
ここで働くユーズの従業員は、社員が4名。全員が墨田区外から通っている。
「ユーズは7時から開始なので朝がすごく早い。埼玉から通ってる子もいて大変なのに、徐々にエスカレートしてもっと早く出社したり、お客さまに合わせて遅くまで残っていたり、今から考えるとすごく生産性が悪かったんです。だから、最近は8時や9時から出勤できるコースを作ったりして、効率的に仕事が終わるようにしています。」
2007年に社内改革を起こしたそうだが、小さな会社の利点を活かして今でも柔軟に社内改善を図られているようだ。
「でも朝が早くて大変だけど、16時には仕事が終わるので、すごく健康的なんですよ!」
朝に強い方にはうってつけの仕事かもしれない。
どんな人に来てもらいたいですか?
「環境やエコにも興味がないとお客さまにも伝えられないので、そういったことに関心のある方ですね。研修などにも積極的に参加してもらえるようにしていて、先日はインドまで社員を連れて一緒に行ってきたところなんです。でも、頭でっかちにエコのことばかり考える方よりは、いろんなことに興味がある方がいいですね。」
「それと、お客さまとのコミュニケーションはもちろんですが、小さな会社なので、社員同士のコミュニケーションも大事にできる方ですね。」
作業が行われている現場を実際に見せてもらうため、工場である染谷商店へ案内していただいた。事務所から歩いて3分ほどのところだが、事務所がある通りから少し脇に入ると確かに町工場が立ち並び、雰囲気が一気に変わる。
取材時は冬だったためか油っぽい臭いはほとんどないが、足元はやはり油でツルツル滑るので歩くのには注意が必要だ。
ちょうど1日の回収を終えたトラックが戻ってきて、スタッフの方が油を下ろし始めた。
この仕事には普通免許が必須で、こういったトラックを運転して回収する。
「運転が元々うまい人もいますが、もちろん苦手な人もいましたし、入社が決まってから教習所の初心者講習に行って運転を学んだ子もいますよ。」
染谷さんご自身も以前は、トラックに乗って回収に回っていたそう。
どんな人でも油を運べるのか聞いてみた。
「私でも運べてたんですから、ぜんぜん大丈夫ですし、今では回収ステーションも増え、ペットボトルの油を集めることも多くなったので、ただ荷物を運ぶ仕事というよりは、お客様とコミュニケーションを取ることの方が重要な仕事へと変わってきています」
「また、女性でも運転ができるように、少し小さいハイエースもありますし、AT車もありますから安心してください。」
今では、東京・神奈川・千葉・埼玉で500箇所以上もある回収スポット。
「最初、置いてもらえるようお店に話に行くと、なんで油を置かないといけないんだ!って断られてたりもしましたが、今ではお客さまから置きたいって連絡をくださることもあります」
「油を持って来ることで、今まで来なかったお客さまが増えたり、ついでに他の商品を買って行ってくださるんですよ」
ファミリーマートやイトーヨーカドー、イオンなどに設置されているそうで、特に葛飾区のイトーヨーカードーでは全店に設置済だそうだ。
回収されてくる油の中には、未開封のものもある。賞味期限が切れてしまいそのまま回収に出されたんだそう。
回収された油を見てみると、確かに容器に入ったままのものや、ペットボトルなどの容器に入っているものがほとんどなので、これなら女性でも簡単に運べそうだ。
とは言ったものの、回収される油の量は毎日相当なもので、ペットボトルとは言え重労働には変わりない。夏場は廃油の臭いもあれば、こぼれて汚れることもあるので、決して楽な仕事ではない。
大きな達成感があることは間違いないが、ただ回収することだけを目的として働いてしまうと長く続けることは難しいのかもしれない。お客さまとのコミュニケーションや自分たちの活動をもっと普及させたいという、自発的な想いを持ってやっていく必要がある。
油の回収だけでなく、アースデイ東京、目黒川みんなのイルミネーション、キャンパス油田といったイベントへの参加や企画も頻繁に行っているため、イベントの準備や当日スタッフとして働くことも多い。墨田区内のイベントでは、毎年夏に開催されている「すみだ・ストリート・ジャズ・フェスティバル」にも参加されている。
イベントで使われる電力の発電を油で行ったり、油でキャンドルを作るワークショップを行ったり、もちろん油回収も行う。
イベントは、活動の普及が目的ではあるが、イベントを通して社員に自分たちの仕事の意義や価値をより身近に感じてもらいたいという、染谷さんの想いもあるようにも感じた。
やはり自分が真剣に取り組んでいることに人が興味を持ってくれて、それにちゃんと答えられるというのは気持ちのいいことだと思う。
1度のイベントでこれだけの量の油が集まるんだとか。
「やっぱりみなさん油の処分には困ってらっしゃるんですよ。家庭の量なら固めて捨てられますが、それでも手間ですし、お店となると量が多くてそういうわけにもいかないですから」
ユーズの事業は油回収と再資源だけでなく、事務所の隣にマルチテナント型モール「油田モール」を運営している。
モール内には、自社で運営するカフェ「油田CAFE」に加え、横浜市のNPO「WE21ジャパン」が運営するリユース・リサイクルショップが入っている。
「この地域にも大型スーパーやコンビニができ、生活が便利になってきましたが、地域の人が集まって情報交換したり、新しい何かをしたいと思う人に提供できる場所をこの地域で作りたかったんです」
油田カフェは、2013円4月1日にオープンしたまだまだ新しいカフェ。冒頭でも述べたように油料理が出てくるわけではなく、ハンバーグやカレーといったメニューが提供される他、広い店内を活用してライブやコンサート、ワークショップ、セミナーなどにも頻繁に利用されている。
今後は、朝活の場にも利用してもらえるように考えられていて、今回募集する方にはそちらのお手伝いもお願いしたいそう。
また、このカフェの特徴でもある大きなキッチンを使って、お料理教室が行われることも。
染谷さんと話して思ったことが、距離が非常に近い。従業員とはもちろん、地域の方とも近所の工場の方とも気さくに話しかける姿はなんとも下町らしい距離感だ。最近では、近所の方に親しみを込めて「油田さん」と声をかけられることもあるんだとか。
区内で行われる青空市場に自転車で野菜を買いに行ったり、近所のカフェに行って地元の方とも積極的に交流されたり、気取りのない姿勢がとても印象的で、きっと一緒に働く仲間にもただの回収作業員ではない、そういった地域のコミュニケーションを求められているんだと思う。
染谷さんご自身が墨田区内での自転車の便利さを知っていることもあり、環境のことも考えてレンタサイクル事業も行われている。
この地域は、これだけの広さのカフェもなければ、自転車がないと移動も大変な地域なので、食事をして自転車を借りて墨田を巡る団体さんのお客さまも多いんだとか。
墨田区は古くから「油脂のまち」として発展しており「油脂」の循環の中で、使用済み食用油を原料とした石けんが作られていたという歴史から、下町の地場産業としてリサイクル石けんを復活させたそうだ。
使用済み油から作られるキャンドルは、実際に自分で作れるワークショップも開催している。
元々、旅行会社で働いていた染谷さんは、環境をビジネスにする会社で働きたいと思い、使用済み天ぷら油などを回収しリサイクルしていたご自身の実家である「染谷商店」に就職された。
入社後、93年にはVDF開発に成功。天ぷら油で車が走ることを証明した。その後、株式会社ユーズを立ち上げ、10年間で東京中の使用済み食用油を一滴残らずリサイクルする油回収システム構築のため、2007年に「TOKYO油田2017」というプロジェクトをスタートさせたのだ。
小さい会社なので、やることは多く、幅も広い。でもその一つ一つがつながっていないようでちゃんとつながっている。そして、日々のコツコツとした積み重ねで、一歩づつ目標に近づいていく。
2020年には東京オリンピックがある。TOKYO油田では、そこでバイオ燃料のバスを選手村で走らせたり、選手村から出た油で電気を灯そうと考えているそうだ。
TOKYO油田の女子チームが、東京オリンピックで活躍する姿を想像するとワクワクしませんか。
女子エコディネーターたちを町中で見かける日も近いのかもしれない。