千輪
2017.12.19(火)

自転車にもっとこだわりを 千輪

千輪

こんな商品あったらいいのに。そう、思ったことがある人は多いはずです。

世の中の商品は、万人受けするものばかりではありません。だから、誰もがこんな商品あったらいいのに、と思うんだと思います。

ないなら作ればいい。とことん自分が満足するものを。
そういう突き詰めた想いは、万人受けはしなくても、きっと共感してくれる人がいます。

千輪

『じてんしゃ雑貨店 千輪(ちりん)』の店主である長谷川勝之さんは、お店を始める前から自分でオリジナルの商品開発をしたいとひそかに考えていました。

そして、お店がオープンして3年が経った今、自分が本当に欲しいと思うもの、あったらいいのにと思うものを、墨田区の職人さんと一緒に作るブランド『chirin』を立ち上げました。

もっと自転車に乗ることを楽しんでもらいたい。そのためには、まずは自分が自転車に乗ることを楽しむことが大切だと考え、自分が欲しいものを徹底的にこだわって作る、これまでにない新しい自転車ブランドが始まります。

ブランド誕生と、第一弾商品の魅力を伺ってみました。

地域にかかせない、町の自転車屋さん

千輪

自転車の本体を売らない、ちょっと変わった自転車屋さんが墨田区向島にある鳩の街通り商店街の中にあります。

じてんしゃ雑貨店 千輪は、ママチャリをメインにした、自転車の修理と自転車の雑貨を売るお店です。置いてある自転車は、修理で預かっているものか代車のみ。売り物は一台としてありません。

長谷川さんが、大手自転車メーカーを辞めてまで、このお店をはじめたのには理由があります。それは、安価で粗悪な自転車が次々に生み出され、そして大量に廃棄されていく現状を知ったこと。

自転車は、本来エコな乗り物です。しかし、安価で作られたものは、すぐに壊れてしまい修理代の方が高くなることも少なくありません。古くなった自転車をお金と時間をかけてわざわざ直すよりも、新しくて安いものに買い換えた方が手っ取り早いことも確かにあります。

しかし、そうなってしまうとまだまだ使えるはずの自転車は簡単に捨てられ、大量のゴミを生み出すことになります。大量製造と大量廃棄を繰り返した結果、本来エコであるはずの自転車によって逆に環境は悪化させています。

そうした現状をなんとかして変えたいと考え抜いて出した結論。それが、本体を売らずに雑貨を付けることで飽きさせない工夫、故障しないための日々のメンテナンス、そして修理は直せなくなるまでとことん付き合うことで、自転車に対する意識を変えてもらおうというものでした。

千輪

自転車安全整備士と自転車組立整備士の資格を持つ長谷川さんの修理は、まさに修理のプロです。

しかし、千輪の修理代は、ほとんど利益にならないような価格設定になっています。それは、どんなに安く買った自転車であっても捨てずに修理に持ってきて欲しい、自転車に愛着を持って欲しい、その強い想いからです。

この想いは、オープンから3年経った今でも一貫して変わることはありません。たとえ経営が苦しくても。

この想いに共感する人が徐々に増え、今ではお店に入りきらないほどの自転車が持ち込まれるようになり、商店街に唯一ある自転車屋さんは、地域に欠かせないお店となりました。

『お金がかかっても、時間がかかっても千輪さんに直してもらいたい』こんな声も聞こえてくるようになり、住民の自転車に対する意識をも変えつつあります。

千輪

店内にところ狭しと並ぶ雑貨は、大手の自転車屋さんに比べると、数は見劣りするかもしれません。

しかし、長年自転車業界に携わってきた知識で、乗る人のことを第一に考えて集めた商品は、自転車を華やかにするものがあったと思えば、こんな便利なものもあるんだと唸らせられるものも多い。しかも、積極的な販売をしないことをモットーに、商品ポップや値札がほとんど書かれていないどころか、押し付けるような接客をしません。

「積極的に進めない理由は、雑貨店だからです。雑貨屋さんの買い物って、そのモノの機能や性能だけではなく、オシャレやセンス、個性やこだわりを表現するためでもあると思うんです。人それぞれ好みは違うし、本当に欲しいものがあれば、聞いてくれるだろうし、ごちゃっとした店内を自分で宝探しのようにお気に入りを探してみてほしいです」

そんな自転車と乗る人のことを第一に考えてきた店主が、本当に欲しい商品を作ったブランド『chirin』。一体どういう想いで立ち上げたのか、長谷川さんにお話を伺いました。

千輪

じてんしゃ雑貨店としてではなく、新しくブランドを作ったのはなぜですか?

「お店は、子供からご年配の方までいろんな方に来てもらえるように可愛い商品をセレクトして集めてきています。ブランド『chirin』で作るものは、自分自身が欲しいもの。あったらいいなと思うものを作って展開していきたいんです」

長谷川さんがあったらいいなと思う商品を作ろうと思った理由は、単純に欲しいものが一般に少なかったからなんだそう。

「この業界で働いて長いですが、気に入ったデザインで欲しいものが、探してもあまりありませんでした。そうなるともう作るしかないなと。やっぱり気に入ったものを身に付けたり、持っていると乗っててほんとに楽しいです。自転車は乗れればいいって方もいらっしゃいますが、それは自転車屋としては悔しいので、小さなこだわりを自転車にも持ってほしいんです」

第一弾商品ができて、率直な感想はどうでしたか?

「想像以上のかっこ良さです。こんなにかっこいいんだと、思い描く以上のものができました。上質な革ってかっこいいですね」

じてんしゃ雑貨店から、自転車雑貨ブランドへ

千輪

カラーリングは、ネイビー、イエロー、レッドの3色

千輪

広げるとA4サイズの資料や、ノートPCなども入る

千輪ブランドの第一弾商品は、自転車用のクラッチバッグ。名前は、スマートクラッチ(SMART CLUTCH)と名付けられました。

バッグに内蔵されたマグネットがフレームにくっつくことで、自転車への着脱が1秒でできる優れもの。付けにくい、外しにくいといったストレスは、全くありません。

中折れしやすいようにと選んだ柔らかく伸縮性のあるイタリアンレザーは、滑らでしっとりとした触り心地。ずっしりとした重厚感があり、圧倒的な存在感を放つ。光沢のある艶感は、使えば使うほど経年変化し、付けるだけでガラリと自転車の雰囲気を変えてくれそうです。

「自転車のフレームに取り付けるバッグはたくさんありますが、着脱がワンタッチじゃない。簡単に着脱できて、自転車に乗らない時も普段からクラッチバッグとして使えるようにこだわりました」

「折りたたんで付けるために、革はHis-Factoryの中野さんに相談して、千輪のためにわざわざ取り寄せてくれたBELLYという革を使っています。イタリアンレザーの中では柔らかい素材で、折りたたみがしやすい。本革は、生きた牛の証であるシワや小キズがあり個体差があるのですが、それも革のいいところです」

ご近所の繋がりから生まれたコラボレーション

his-factory

スマートクラッチの制作は、吾妻橋にあるハンドメイド革製品の制作、販売を行う鞄工房『His-Factory』の中野さんが担当されました。

お二人が知り合ったのは、千輪で自転車のメンテナンスをしたことがきっかけでしたが、実はオリジナル商品を作るなら中野さんと最初にやりたいと、お店をオープンする前から長谷川さんの中には構想があったそうです。

「中野さんが一緒に何かやりたいねって声をかけてくれたことがきっかけでした。でも、実は3年前にこのお店をやろうと思った時から、墨田区の職人さんとコラボしたいなとざっくり思っていて、その時からネットで中野さんのことは知っていました」

ようやく実現したオリジナル商品は、スタートから完成まで1年がかりだったそうです。

「あったらいいのにってものは世の中にないものなので、めちゃくちゃなことをお願いしてしまうんじゃないかと、不安でなかなかお願いできませんでした」

「でも、恐る恐る相談すると快諾してくださって。初めてのことなので、まずはいろんな相談をしながら、サンプルを作ってもらいました。それを自分で実際に使ってみて、使い勝手を少しずつ改良しながらやってたら、一年がかかってしまいました」

his-factory

中野さんが作る革製品は、一つ一つ丁寧に丈夫で長く使えるものを制作しています。どうしたら大切に使ってもらえるかを考え、手間と時間とコストをかけ必要な人に必要な分だけをしっかり作ることを大事にされています。

今回のバッグも事前に在庫をたくさん作っておくのではなく、本当に欲しい人のために作る。受注生産に近い形を取られているため、制作には数ヶ月待つこともあるそう。

「中野さんのバッグは、大量生産じゃなくて手間ひまかけて丁寧に作る少量生産です。その想いに共感してるからこそお願いしました。オーダーが入ることを予想して予めたくさん作ることはしないので、場合によってはお待ちいただくことになります」

「それでも欲しいって言ってもらえるものを作るのがいいんじゃないかなと思います。気軽にいつでも買えるよりは、ちょっと待ってでも欲しいもの。できるのを待つ楽しみも楽しんでもらいながら、待ってくれる人に一つ一つ丁寧に作ってあげたいんです」

千輪

ぱちっと自転車に貼り付く感覚が気持ちいい

千輪

見とれしまうほどの艶感

内側にはマグネットが内蔵されており、クロモリやスチームフレームに最高にフィットします。アルミフレームではマグネットは付きませんが、しっかりと挟む構造のため付けられないことはないそうです。この部分がこのバッグの最大の特徴であり、特にこだわった点だと言います。

「自転車にいかに簡単にストレスなく着脱できるか、ここに一番こだわりました。最初マグネットは2つだけだったんです。でも、実際に中にものを入れて乗ってみると、バッグが横向いて走る時に支障が出たので、ぼくがわがまま言って何度もサンプルを作っていただきながら改善を繰り返して、今の形になりました」

「一般的にサドルバッグやフレームバッグとかって、基本は自転車に付けたまま。でも、僕にとって自転車は生活の一部。自転車と日常生活の両方で使えるバッグが欲しかったんです。これはさっと取り外せて、一緒に持って行っても違和感がありません。この無茶ぶりを中野さんは叶えてくれました」

千輪

男性でも女性でも非常に手になじむ

千輪

薄くて面積が広いフォルムで、マチが無いので邪魔にならない

このカバンはどういった発想から生まれたのでしょうか?

「ジャケットを羽織ってかっこよく決めたのに、メッセンジャーバッグはちょっとスポーティすぎるなぁ、バッグパックじゃカジュアルすぎるなぁと思うことがあって。しかも、ジャケットが傷むんです。生地が毛羽立ってきたり、ショルダーラインが崩れたりシワになったり。でも、ジャケットスタイルの時は、自転車に乗れないとか嫌ですよね」

「あと、自転車でちょっと出かける時って、持ち物は財布と携帯とちょっとした小物くらい。そんな時、ジーンズのポケットだけじゃ足りないけど、メッセンジャーバッグやバッグパックってほどでもないなぁと。そんな発想から生まれました」

千輪

チャックは便利さよりも安全面を考慮した造り

千輪

千輪とHis-Factoryのロゴは、内側のみにさりげなく

メインの収納部分のチャックは、敢えて押し出す向きになっていて、手に持つと開けやすいが、自転車に乗った状態だと開けづらい。これは敢えてそうすることで、乗ったままカバンを開けようとして片手で運転するなどを防ぐ狙いがあるそう。ただかっこいいだけじゃないこうした部分も、このブランドらしさを感じます。

今後、ブランドを通してこの地域以外の人にも、お店のことや取り組みについて、広く知ってもらいたいと考えているそうです。

「このカバンが千輪やHis-Factoryを知ってもらうきっかけになってほしいですね。千輪とHis-Factoryの想いがたくさんの人に届くといいな」

千輪

世の中にないものを作るのは難しい。
でも、誰かの真似じゃなくて自分だけのオリジナルには、無限の可能性があってとてもワクワクします。

そんな千輪のワクワクが詰まった第一弾の商品、ぜひ手にとってみてみて欲しいなと思います。

店名 千輪(chirin)
住所 東京都墨田区向島5-50-3 鈴木荘1F
URL ブランド chirin:https://www.facebook.com/chirinchirin.jp/
じてんしゃ雑貨店 千輪:http://chirin-chirin.jp/
サイズ W37cm×H29cm×D1.5cm
素材 ベリー(イタリア植物タンニンなめし革)
カラー イエロー、ネイビー、レッド
裏地 綿100%(ベージュ)
商品の購入はこちら

その他の記事

PAGETOP