素材が持つ魅力と創造力 有限会社 サトウ化成
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ご応募ありがとうございました。
「休みが苦手で単純に立ち止まってしまうことが怖いんです。でも、きっと楽しいから休みたくないのかな。これもできるあれもできるって考える、それだけで今はワクワクしてきます」
これからのものづくりには、ただ『作る』ことから自分たちで『考える』ことが不可欠になってきています。日々の生活での気づきやちょっとした発想の転換。それが新しい製品を生み出すきっかけに繋がるかもしれません。
そんな頭の中で考えていることが形になって、世の中のどこかで使われるかもしれない。
そう、考えると日々の生活もワクワクしてくるはずです。
今回は、さまざまな素材を加工する有限会社サトウ化成で、一緒にワクワクするものを考え生み出してくれる新しい仲間を募集します。
京成押上線 八広駅を出て、ゆりのき橋通りを10分ほど歩くと工場が見えてきます。
すみだの仕事で取材に訪れるのは、3度目です。
今回、工場を訪れると外観が鮮やかな黄色に塗り替えられていました。遠くからでも、とてもよく目立つポップな外観には、地味な工場のイメージはありません。
サトウ化成の社長である、佐藤さんはなによりも仕事を『楽しむ』ことを一番大切に考えています。きっとこの外観には、ここに訪れる方はもちろん働く人にもワクワクしながら働いて欲しい、そんな気持ちが込められているように感じます。
これまで、佐藤さんとお父さんの二人三脚でやってきたこの会社は、昨年事業拡大に向けてはじめて20代の男性を正社員として迎え入れられました。
しかし、その分これまで以上に依頼を受けられるようになったことで、仕事は増える一方。さらに、今年新しい機械が導入されたことで業務の幅も広がり、ますます忙しくなっているそうです。
目の前の業務に追われるだけでなく、新しいことにチャレンジして工場の未来を切り開く新体制を見据えて、さらに新しい仲間を募集することになりました。既に、新卒で20代の女性が来年4月に入社することが決まっており、新体制は徐々に始まろうとしています。
ゆくゆくは、現場を社員に任せ、佐藤さん自身は新しいことへのチャレンジや、社外への営業活動に注力していきたいといいます。
「あまり考える時間も取れてないけど、ふと何してたんだろうってくらいいつも時間に追われています。今は加工もしないといけないし、見積もりもしないといけない。ゆくゆくは、事務所にいて指示出しで済むとか、ぼくが現場にいなくても完結できるようにしたいと思っています」
ここで作られている製品は、主に『緩衝材』です。
緩衝材とは、移送中などに製品が傷つかないようにする、製品のための製品です。
これを、打ち抜きと呼ばれる加工を用いて、製品の形状に合う形にカットしています。
打ち抜き加工は、抜型と面板との間に加工する材料を挟み、機械で加圧することで希望の形状に素材を抜く加工方法です。この加工ができる素材は、緩衝材に使われるウレタンフォームに限りません。
ポリエチレンフォーム、ゴム、樹脂シート、両面テープ、紙、革といった実にさまざまな素材を加工することが可能です。
佐藤さんにお話を伺うと、打ち抜き加工を行う会社自体は、それほど珍しいわけではないそう。
ただ、これだけさまざまな素材を扱える工場というのは、他にはない特徴の一つでこういった技術を持った工場を探している方は多いそうです。
「細かい部分や要望に対応してくれるところが他にあまりないし、図面だけだと分からない。工場に来て相談したい方には、現場に来て話せてなおかつ都内にあるので、うちはニッチなんです」
「だから、親父がやってた頃は取引先が30社あるかないかでしたが、今はネットからの問い合わせで取引が始まったところは300社を超えるようになりました」
作るものや使う用途に合わせて素材を変えられる上に、細やかな要望に応えることができるフットワークの軽さは、他との差別化を図るには十分すぎる強みといえる。
「抜きの加工をやってる会社っていっぱいあるんですよ。ただ、これだけの素材を使ってるところって少ない。いろんな素材ができると作ってる方も楽しいし、新しい発想も生まれやすいので、うちは業界を絞らずにやるようにしています」
問い合わせの多くは、会社のホームページを見てという方がほとんどですが、工場へ実際に来てくれた方は『ようやく見つけました』と、話す方も少なくないんだそうです。
ネットの問い合わせに限らず、近隣の会社との付き合いもとても大事にされていて、区内の仕事も近年増えているそうです。
工場の棚にずらっと並ぶ型板を見せていただくと、すみだの仕事で取材をさせていただいた墨田区の事業者さんの名前がいくつも並んでいます。
「数を多く作る仕事は、まだまだ区外の仕事がほとんどです。でも、区内の会社から相談を受けることが増えていて、製品を守るための搬送トレーだったり、部材をうちで作ってたりします」
こうした区内区外に関わらず、発注の依頼がひっきりなしにあるのは、おもしろそうな仕事や力になってあげたい方に対して、基本的に断らないという佐藤さんのスタンスが大きいように思います。
大量生産ではなく、少ないものでは1点からといった依頼にも積極的に応え続けてきた結果、この工場を頼りにしている取引先も多いそうです。
今年、事業拡大のために、導入されたカッティングプロッターと呼ばれる新しい機械は、これまでメイン事業としてきた抜き加工に加えて、型を使わずに希望する形に素材を切断加工することができます。
これによって、会社としての仕事の幅は大きく広がりはじめています。
「機械がちゃんと動き出して半年くらいですが、加工できる素材も仕方も範囲がものすごく広がりました。そこから、じゃあどういう分野にいけばいいのか、どこまでを会社の範囲にするかっていろいろと考えている段階ですが、それが今すごく楽しいんです」
試しに機械を動かしていただき、実際にカットするところを見せてもらいました。
パソコンから過去のデータを呼び出し、機械が動き出す。数秒の間、機械が素材の上を行ったり来たりするだけで、データ通りの形に素材があっという間に切り取られる。
新しい機械が入ったことで幅が広がっただけでなく、これまでは型ありきだった加工が、コンピューター上でデータを作れさえすれば、すぐに形にできるようになりました。
これによって、型にかかるコストがカットできるのはもちろん、試作から製品化までの時間が飛躍的に早くなったそうです。
「データがあれば全て具現化可能なので、工場に来てもらう前にデータを送っておいてもらえれば、打ち合わせのときには試作品を用意できます。机上じゃなくて具現化から話ができるので、ものすごく話が早くなりました。だから、うちは見積もりを出して決まる確率が、すごく高いんです」
他にもこれまでの加工との大きな違いはあるのでしょうか?
「コスト面で言うと、大量に作る場合はこれまでの抜き加工の方が単価は安くなります。ただ、例えば厚い素材だと抜く時の圧力で側面にエグレてしまいますが、プロッターでは垂直に切ることができます」
「それに、エグレたりすると若干指定サイズよりも誤差が出るので、綺麗に作るとかイメージ通りの形に作るのは、新しい機械の方がすごくいいんです。だから、できることがすごく増えたし、取引先の業種も変わりはじめています」
既にたくさんの取引先から、試作品や製品化の依頼が殺到しているそうです。
「最近だと接合部分を作るメーカーさんから、新製品の検証を行う為2種類の材料で数種類の形状を製作する依頼がありました。つぶれ具合を見るのにウレタンがちょうど良かったようで、データがあれば1個から製作できるのも良かったようです」
「重いものを軽くしたり、小さいものを拡大することができるので、子供に仕組みを説明するようなものも作れます。これを金属で作ろうと思ったら大変だけど、素材によってはバラすのも簡単だし、軽くて持って帰りやすいんです。それを型なしで作れるのは大きいですよね」
新しい機械の操作を担当するのは、昨年の1月に入社した小田垣さん。
入社して1年ほどですが、今ではこの機械の加工からお客さんのやりとりや見積もりまで、一貫してこなされています。
佐藤さんから見て、この1年で小田垣さんはどう成長しましたか?
「すごく成長したと思います。社内の人としか関りがないのは嫌なので、いろんな人と対話してもらっていてお客さんとも話せるようになってきました。取引先の人も若い人が増えてきているので、若い人同士の方が噛み合うこともありますしね」
「それに、ぼくとは違うチャンネルを持ってるから、こちらもヒントを得たり勉強させられることもあって頼りになってます。この機械を使ったアイデアは彼の発想が大きいと思いますし、ただ作業をするだけじゃなくて新しい提案もある。常に早くできる方法を考えてくれてるので、かなり作業効率が上がりました」
こうして佐藤さんが抱えていた仕事を、徐々に任せる形へとシフトしていこうとされています。今後は、自分が見切れない工場での作業については、現場に任せられるようになればと期待されています。
基本的な仕事内容は、機械を使って加工をするオペレーション業務になります。
多い時には、何千何万といった材料をひたすら加工したり、出荷や梱包といった単調な作業の繰り返しです。
その一方で、決まった仕事だけではなく、新しい機械を使った事業や発想でさまざまなことに挑戦ができる環境があります。今後は新しいことにも一緒に挑戦したり、提案をしてくれるような関り方をしてくれる方を求めています。
「数をこなす既存の仕事がメインですが、どんどんできることを増やしていきたいと思っています。単にうちの仕事だけじゃつまらないので、やりたいことを提案してもらって一緒になにかを始めたり、外にも積極的に出ていく。うちではいろんなことができるから、そういうことも楽しんで欲しいですね」
「会社の一員ではあるけど、個であって欲しいんですよ。個として仕事の話ができる、仕事を取ってこれる。欲を言えば、加工をするときもあれば営業マンになることもある。いきなりそこまでを求めているわけではないですが、自分で考えて動いてもらわないといけないシーンは多いと思います」
少ない人数で決まりきったことが少ないからこそ、部署や自分の仕事だけに捕らわれることなく柔軟にやっていって欲しいそうです。
「このポジションには、こういう人が欲しいというわけではないんです。うちは機械の種類がそんなにあるわけじゃなくて打ち抜くか切るかなので、部門を仕切る必要がないしそのつもりもありません。これがやりたい!って人には選ばれないのかもしれないけど、いろいろやってみたい人にとってはいいんじゃないかな」
「それに、作るということも大事だけど、これからは発想という部分も大事。こういうのを作るとか作りたいってことを発想して、自分でちゃんと言えるようになっていくことが必要になるかなと思います」
新しい切り口を徐々に増やしながらどう成長させられるか、どう一緒に成長していけるかは、これから会社としての課題でもあるように思います。
「すぐに引退ってことを考えているわけではないけど、親父が直接やってる仕事もあるから、そこを引き継いでくれる人も育てていきたいですね」
73歳になった今でも毎日工場に立ち、現役で働かれています。今も抱えている仕事も多く、そういった仕事や取引先も引き継いでいかなければいけません。
会社を変えていくにあたり、佐藤さんはさまざまな起業塾やセミナー、プロジェクトに積極的に参加され、これまでにやったことのないことに挑戦したり、会ったことがない人と出会い引き出しを増やし経営に活かしてこられました。
今の経営や事業で、参考にされている会社や経営者の方はいるのだろうか。
「いろんな人との出会いがあって全ての方ですね。全部が勉強です。でも、同じことをしても二番煎じなので、同じことはしたくないんですね。そんな人はたくさんいるから、ベクトルは同じでもぼくはぼくなりで、ちょっと飛び出すくらいの感覚でニッチなところにいきたいですね」
工場は、基本的にいつでも誰に対しても開かれていて、毎年たくさんの方が訪れます。
見学に来た方に対して説明されている佐藤さんの姿を見ていると、決して工場の魅力や技術を押し付けるのではなく、とてもナチュラルに自分のやっていることを伝えていて、不思議とすっと説明が入りこんできます。もともと話をすることは苦手だったそうですが、寡黙なイメージのある職人さんとは、ちょっと違います。
「工場見学をやってるのは、来てくださった方に新しい引き出しを増やしてもらえたらと思っています。ある時、それを使う時がきて引き出しを開けるとサトウ化成が出てくればいいな、そのくらいですね」
一歩踏み出すことを迷っている方がもしいたら、まずは工場見学に行ってお話を聞いてみてもらいたいなと思います。きっと新しい発見があるはずです。
まだまだ決まったルールのようなものは少ないので、日々変わっていくことも多いかもしれません。ですが、次なるステージに向けてこれから大きく舵を切ろうとされています。
会社は、今日明日で急激に大きくすることも、変わることもできませんが、間違いなくそして確実に進化していて、それを実感しながら一緒に盛り上げていくことができるタイミングです。
そんな変わっていくことをワクワクしながら一緒に楽しめる人や、自分で何かをはじめたい人にとっては、とても良い環境だと思います。