2017.04.07(金)

引き継いだバトン 木村稔会計事務所

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ご応募ありがとうございました。

木村稔会計事務所

やりたい仕事を目指すのに、早いも遅いもありません。やる気さえあればきっとなんだってできる。

「これですか?大工時代のものです。昔はハンマー握ってましたから。もう20年近く前ですけど、それでも今でも消えずに残ってますね」

墨田区八広で小さな税理士事務所を営む木村さんの手のひらには、今でも若い頃にできたマメが残っています。この仕事をはじめるまでの経歴やきっかけを聞いていると、なにかを始めるのに遅いとか遠回りなんてない、そんな風に思いました。

ここで地域の方に頼りにされる、会計事務所の職員を募集します。

木村稔会計事務所

木村稔会計事務所は、創業や会社設立の際のお手伝いや、税務、融資、相続や事業継承、助成金などの申請、さらには経営管理支援や株式・事業評価といったことまで、小さな個人商店から上場企業まで、幅広い企業の支援をする税理士事務所です。

最寄り駅である京成曳舟駅から事務所まで徒歩6分ほどの道中は、第二次世界大戦による戦災を免れた地域で、ビルは少なく古い建物が多い。今でも昔の名残が色濃く残り、行き交う人が自然と挨拶をする、そんな懐かしい雰囲気の町です。

事務所に着いて自動扉を開くと、エントランスはなくすぐにこじんまりとした事務所になっています。一番奥に座っていた木村さんが立ち上がって、笑顔で迎えてくださいました。

木村稔会計事務所

士業に関わる先生と呼ばれる方は、年配の方が多く固いイメージがありますが、木村さんはそれとはちょっと違う。年齢は42歳ということですが、見た目はとても若々しく時折ジョークも交えたフランクな会話がとても心地いい。気のいいお兄さん、そんな言葉がとても似合う気がします。

お話を伺ってみると、以前は大手企業で働かれていて、今でもこの事務所以外にいくつかの会社を経営したり、上場企業などの役員も兼務されるなどここだけに留まらないパワフルな活動をされています。

しかし、以前の会社を辞めて、下町の事務所や他の会社を経営する立場になった経緯を伺ってみると、とても意外な経歴を語ってくださいました。

「がらりと変わりましたね。前の会社は少なくても何百人とか、大きいと何千人規模の会社を相手にしていたので、ここに来てこれまで見えなかった部分が見えるのはおもしろいですね」

木村稔会計事務所

木村さんがこの仕事を目指したのは、約20年前のこと。

兵庫県神戸市生まれ。高校卒業後は大学には進まず、アルバイトで飲食店や引っ越し、警備員やとび職といったさまざまな職を転々としながらも、将来の不安から20代前半の頃に簿記の勉強をはじめ、資格の取得を目指します。

「若い頃は、とび職をやったり大工をやったりいろんなことをしました。でも、人生まだまだこれからだから資格があった方がいいと思って勉強をはじめました。将来何をしていいか分からなかったですし、肉体労働だけやっていくのも辛いものがありましたから」

その後、働きながら通信制の大学に通いはじめ、徐々にこの仕事のおもしろさに気づいていきます。これまでの仕事はきっぱり辞め、勉強に専念して4年で公認会計士試験に合格。東京に出て会計士・税理士として働き始めて13年ほどになります。

そして、木村稔会計事務所ができたのは、5年前。

実はご自身で立ち上げられたものではなく、この地で30年近く開業されていた藤沼会計事務所の先生が急病で亡くなられた後、引き継ぐ形でバトンを受け取られました。

「誘っていただいた時はまだ企業に勤めていましたが、独立も考えていろいろと探していた時期だったのでタイミングが合ったんだと思います」

この事務所を開業した藤沼さんの奥さまに、その当時のお話を聞いてみます。

木村稔会計事務所

墨田区で生まれ育った藤沼さんは、81歳という年齢ながら今でも現役で働かれています。とても穏やかな物腰で、事務所の和やかな雰囲気を作り出しているのは、藤沼さんの存在が大きいように思います。

「引き継いでくださったのは、5年前になります。木村先生までに何人かの別の税理士さんにお願いもしましたが、定着しないことで顧問先が減って苦労したので、来てくださってほんとに感謝しています」

木村さんに変わってお客さまの反応はどうでしたか?

「主人の時代には、パソコンがなくても通用して、お客さまがついて来てくれました。でも、今はきちっとやらないと通らない社会で、先生はこの時代にマッチして仕事されてると思います。こんなのどうでもいいのにってことも、長い目で見るときちっとやってないとどっかで歪が出てきますから」

この地域に根付いてやってきた藤沼会計事務所は、ワイシャツにネクタイを着ている方よりも、作業着や長靴を履いた近所の方が相談にやってくることが多かったそうです。

そしてそれは、今も変わっていません。
そこには藤沼さんの時代からの『敷居の高い場所にはしたくない』という想いが受け継がれています。

木村稔会計事務所

「別の税理士さんに断られて引き受けてくれるところがない方も多いんです。そういうところこそなんとか引き受けてあげて、仕事で利益を出せなくて困ってる人や会社を、軌道に乗せてあげたいと思っています」

藤沼さんの時代からの取引先は、60年以上の付き合いになるところもあり、今では墨田区で40社ほど、その他にも遠いところだと栃木県や神奈川県にもお客さまがいます。

「お客さまとの関係は一番大事しています。それがないともちろん仕事続けられないですから、関係をどうやってみつけていくか。まめに連絡したり、一緒に飲みに行くこともあります。そこで、仕事だけじゃなくてプライベートな話や、愚痴を聞いたり話したりしながら関係を作っていきます」

「そうした時に私も経営者ですから、やはり共感できることも多いんです。愚痴って発散みたいなところがあって解決にはならないけど、気持ちが少しは収まることもあります。そういうのはみなさんお持ちですし、特に社長は孤立した身分で、誰にも言えない悩みがあったりしますから」

木村稔会計事務所

この町で働いてみて、印象に残ったできごとはありますか?

「感謝されることが多くなりました。例えば、税務調査ですごく税金を取られると心配される経営者がいらっしゃいます。それに慣れていない方も多いですから、そういう時に調査の不安を取り除いてあげることもあります」

「また、経営面で相談されることもあって、アドバイスをして財務状況が良くなることもあります。不動産投資や機械の設備投資もそうです。資金繰りで銀行から融資を受ける際に同行することだってあります」

しかし長年取引をしていると、昔は栄えていても、時代の流れで日本の高い人件費では合わなくなり、海外からの輸入に頼ったもののビジネスとしては食べていけなくなるなど、廃業していく会社もあるそうで、そのようなケースも数多く見てこられています。

ですが、そんな中でも事業転換や拡張によっていい方向へと進んでいる会社があると、木村さんはいいます。
その一つでもある、取引先のサトウ化成の佐藤さんにもお話を伺いました。

世代交代をして、次々と新しいことに挑戦し続けている勢いのある会社です。

木村稔会計事務所

佐藤さんの会社は、いろいろな素材を製品の形状に合わせてカットする会社で、作っている製品は主に商品を保護するための緩衝材になります。

お父さんから事業を継承してから、若い人材を積極的に採用したり、これまでにない発想で商品を生み出すなど、過去のやり方だけに囚われず新しいことにどんどん挑戦されています。

「親父の頃から藤沼先生にお願いしていたから、もう30年くらいになると思います。実は、数字がすごい苦手で、いけないと思いつつも昔からほとんど丸投げしていて。去年、税務調査があってその時も木村先生に来てもらって対応方法などを教えてもらいました」

会って話すのは年に1回ほどで、普段はFAXなどでやりとりする程度だそうですが、こうして何かあった時に相談できるというのは非常に心強いそうです。

藤沼さんから木村さんに担当が変わってどうですか?

「過去の資料は持っててくださってるので、特に困ることはなかったと思います。印象的だったのは、先生は俺よりも歳は下だけど、今までの方はお父さん世代だったので急に若くなって驚きました。でも、これは大きいですよね。すごく親しみやすくなりました」

木村稔会計事務所

ここでの具体的な仕事内容は、帳簿の記帳したり、エクセルで資料や申告書を作ったり、税金の届出書を書いたりといった、いわゆる『事務作業』。

それに加えて、お客さまのところへ実際に行く『外回り業務』があります。いろいろな資料の説明であったり、相談事や困り事を聞いてきたり、時には顧問先の社長さんにどう会社を経営すればいい方向に導いていけるか、といったアドバイスをします。

お客さまの業種や規模がさまざまですが、大変なことや苦労することはありませんか?

「大変な部分ももちろんあります。業種ごとの注意点もあるので、ある程度その会社についての勉強は必要かと思いますが、大変さよりもそういったさまざまな業種の会社と関わることで、新しい事業の内容が分かって基本的には楽しいことの方が多いと思います」

「ただ、大きな流れは一般的な仕事内容と変わらないです。基本は、帳簿をつけて、申告の準備をすること。資格は必要ないですが、税務の知識がゼロじゃだめなので、2~3年の実務経験は必要です。あと、エクセルなどパソコンの操作がある程度できることが望ましいです」

木村稔会計事務所

ここで働く従業員は、木村さんを合わせて4人。
みなさん、どんなところを気に入って働いているのでしょうか?

「やはり働きやすさだと思います。大企業や大きな事務所だとある程度組織に準じたルールで、いわゆるサラリーマン的な働き方でやらないといけませんが、ここは自分たちで決めたり変更できる柔軟性でしょうね。下町的な感じで堅苦しくなく気持ちも緩やかに構えてできるのも、この地域の良さですよね」

ここには、決まりきったルールはありません。
例えば、業務時間は9時~18時と決まっているものの、個人の都合に合わせて変動させることが可能です。今いる従業員は、ほとんどが近所にお住まいで昼休みには一度自宅に帰って食事を取るため、1時間だった休憩時間を30分伸ばしたのも、そういった声があったからだそう。

また、子育てをされている方など、フルタイムで働くことが難しくても一部在宅作業を可能にするなど、最低限の業務をこなせるなら可能です。働く人のニーズやライフスタイルに合わせて柔軟なスタイルの環境があり、さらにいろいろな意見を言って、ルールをどんどん作っていってほしいそうです。

働きやすさの他には、どんな経験が得られるでしょうか。

「勉強できる環境があります。お客さまは上場企業もあれば、小さい会社もあって幅が広い。業種も飲食店、不動産、建設業、製造業、ITなどがありますので、勉強になりますし経験も積めます。研修やセミナーも本人の希望に応じて行けるので、将来的に独立してもらってもぜんぜんいいです」

木村稔会計事務所

木村さんが、仕事をする上で大切にしていることは『仕事を楽しむこと』。これはポリシーでもあるそう。
こうした職場の自由度の高さは、そういったところから来ているのかもしれません。

この仕事を辞めたいと思ったことはありますか?

「しょっちゅうありますよ。でも、食べていくには働かないといけないですし、長年この仕事をやってますからやっぱり思い入れはあります。それに、お会いして楽しいお客さまもたくさんいるので、個人的な気持ちの面でも付き合っていきたいって気持ちがあるからこそ続けられてます」

やりがいを感じるのはどういった時でしょうか?

「やはり喜んでもらったり感謝されることですね。あとは、お客さまと一緒に何かを達成したり、契約できたりすることですね。最近は、この業界でも単価が下がっていますが、税理士は安ければいいという世界ではなくて、その会社に合ったレベルの税理士と密接な関係を作ってやっていくことが大事です」

木村稔会計事務所

最近取り付けられたという外壁の看板のデザインは、クラウドソーシングを利用して会ったこともなければ電話もしていない相手と、メールとチャットのみでやりとりをして作ってもらったそうです。

こうしたサービスにより、デザインの仕事は安価に頼めるようになったことで徐々に数や単価は減っている。これと同様のことがこの業界でも少なからず起こりはじめていて、危機感を感じているそうです。

「我々は、資格商売なのであまり極端にはなりませんが、ただ価格競争は進んでます。ネットで検索するだけで安いところはいっぱい出てきますし、昔からある仕事は衰退の一途ですから、税理士だけじゃなく士業全体で厳しくなってます」

「たぶんうちの事務所も10年後にあるか分かりません。それくらい厳しい業界なんですね。なのでなんとか生き残っていくためにも成長を自分で目指さないといけません」

そういった状況もあり、新しい取り組みも始められようとしています。

「別事業で渋谷にあるホテルの1区画を借りて改装して、シェアオフィスのようなみんなで仕事をする場所の運営をはじめる予定です。そこは、士業関係なく一般のサラリーマンの方などが勉強したり、交流したり、仲間を作ったりできるような場になればと思っています」

「お金儲けよりはどっちかというと経営を楽しみたいんです。あと、自分の社会経験のためですかね。好奇心がいろいろとあって、事務所の経営とは全く違うことをやりたいということもあると思います」

木村稔会計事務所

こうした新しい取り組みや外回りに出ていることも多いため、木村さんがこの事務所にいる時間は週の半分ほど。だからこそ、経験は少なくてもこの事務所をまとめて率いていってくれる、そんな意気込みのある方を求めています。

「引っ張っていってくれるような方に入って欲しいですが、それにはやる気を持って楽しくやってもらわないと。単に対価をもらうだけの関係では難しいですよね。ですので、スキルや経験の有無よりも、意気込みがあって5~10年しっかり働いて、ゆくゆくそんな存在になってくれればと思っています」

「あとは、この場所に根ざして、地域の中小企業を支えて盛り上げていく、縁の下の力持ちとなっていきたい気持ちがある人だといいですね。困ってる方のサポートをして、喜んでもらいたいとかトラブルを解決してあげたいという想いですよね。そこはやりがいに繋がる部分でもありますし」

木村稔会計事務所

最後に、この事務所の今後の目標を聞かせてもらいました。

「将来的に近くで大きなところに移りたいと思っています。他の税理士事務所と提携し税理士法人化するのもよいですし、少なくとも従業員を20人くらいの規模にしたい。ビジネスとしてそこはちょっとした夢ではありますね」

仕事の規模は決して大きなものではないかもしれません。でも、相手の顔がよく見える仕事はきっとその分やりがいも大きいはずです。

ただこなすだけの仕事ではなく、人と人との関係をしっかり築いていく。そうしていけば、困ったときにまず最初に顔を浮かべてもらえる存在にきっとなれるはずです。

いろいろな人と関わりながら、この地域を支えていきたいという方はぜひ応募してみてください。

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