世界と地域がものづくりで繋がる場所 センターオブガレージ
こちらの求人は募集が終了しました。
ご応募ありがとうございました。
ベンチャー企業が取り組む新しい開発や研究には、ものを作る技術力と生みだす場所が必要です。一方で、技術力を持った町工場は、新しいものを生み出すための発想力と知識を必要としています。
ベンチャーと町工場が繋がり、そこに大企業が連携し補い合うことで、実現し得なかったことを可能にし、やがて大きな力になることがあります。そんなパワーを生み出すために、ガレージの中で日夜研究と熱い議論が交わされ、世界を変えるものづくりが誕生しようとしています。
2018年4月に墨田区横川にオープンしたセンターオブガレージ(Center of Garage)は、ベンチャー企業・町工場・大企業の三者連携を目的とした、インキュベーション施設です。ここでは、研究開発やものづくりに特化した事業を行うベンチャーに対し、あらゆるサポートを提供しています。
この施設を手がけたのは、新宿区に本社を置く『株式会社リバネス』、そして施設運用を行うのが子会社である『株式会社グローカリンク』です。
今回は、グローカリンクの従業員として、この施設の運営・管理を専門に行うスタッフを初めて募集します。
センターオブガレージがある場所は、東京スカイツリーから少し南下した錦糸町との間。墨田区を南北に流れる、大横川親水公園のすぐ側にあります。
名前の通り、外からはまさにガレージそのままの巨大な倉庫。どこが入り口なのかと少し戸惑いながらも、脇にある小さな扉から中に入ると薄暗い階段が現れ、まるで基地へと繋がる秘密の通路のようで、ワクワクします。
階段を上がっていった先には、天井が高く開放的なキッチン付きのスペースが広がっています。これまでのシェアオフィスやコワーキングスペースといったどの場所よりも遥かに規模が大きく、この圧倒的な広さには、初めて訪れると驚きます。
元々は倉庫だった無機質な設えをそのまま残しながら、温もりのある木目の家具や電灯が醸し出す雰囲気は、DIYやものづくりが好きな男心をグッとくすぐります。
グローカリンクの代表取締役である長谷川さんに、お話を伺いました。
二つの会社が関わるこの施設ですが、長谷川さんは学生ベンチャーから始まったリバネスの立ち上げに携わっており、現在は執行役員でありながら、センターオブガレージの運営を担うグローカリンクの代表も務められています。
「リバネスは、16年前に大学の研究者、理系の修士や大学院生の仲間たちと、科学の教育事業でスタートした会社です。そこで、大学の研究って分かりづらいし、企業も専門領域が違うと分からないので、困ってる人と産学連携をしたりノウハウを伝えようと、テックプランターというベンチャー支援の取り組みを2014年から始めました」
「ただ、支援するのは人もお金もかかりますが、ベンチャーはお金がないので、そもそも成り立たない。でも、たくさん連携したい人は世の中にいて、その人たちもどうしていいか分からない。じゃあ、ベンチャーとの付き合い方や、どこにも出てない面白いところを紹介するかわりに、いろんな大企業にパートナーで入ってもらうことで、運用ができるモデルを始めました」
テックプランターは、ビジネスプランコンテストを入り口に、大学や企業で生まれる科学技術の社会実装を促すためのプログラムです。
第一回目のコンテスト優勝者は、世界初の垂直軸型マグナス式風力発電機の開発を行う『株式会社チャレナジー』。そして、その当時審査員を務めていたのは、墨田区の金属加工メーカー『浜野製作所』の浜野社長でした。
チャレナジーのようなベンチャー企業は、ものを作るが作り方が分からない。そんな時に、テックプランターをきっかけに知り合った浜野製作所に相談をし、一緒にものを作って成長を続けてきました。
「こういう取り組みをもっと広げようと、墨田区の町工場を訪問してものを作れる人を探すのと、町工場も新しいことをやりたいけど、何をしていいか分からないから、ベンチャーと何かやることがきっかけになればと、双方が連携できる取り組みを行ってきました」
こうしたさまざまな取り組みにより、ベンチャーが考えたことを町工場の技術力で形にする流れが生まれた。しかし、作るための資金面でつまづくベンチャーも多く、そこを支援するためにリバネスは、小会社のグローカリンクを立ち上げ、開発に打ち込める場所を作ります。
「例えば、ベンチャーが作りたいものを、町工場で作れるところまではいく。でも、お金がなくて意外と次に進めないことが多い。その課題を解決するため、500万円くらいの少額出資をして支援する、小口投資を事業のメインにした会社がグローカリンクです。もう16社に投資をして、大企業と町工場との連携もできてきました」
「でも、ものづくりベンチャーは、人がたくさん関わらなきゃいけないから、人は増えるけど売上が上がるまでに時間がかかる。その状態では、デスクワーク中心のコワーキングは無理だし、オフィスを借りると都内は高い。さらに、ものづくりは耐荷重や天井高などの課題があって意外といい場所がない。じゃあ、その場所を作ろうと東京都の補助金に申請をして、インキュベーション施設にしたのがこの場所です」
製造業との連携が必要な人たちをターゲットにしたこの場所は、普通のインキュベーション施設のコンセプトとは大きく違い、似たような場所は日本だけでなく海外でも少ない。
「最近では、海外のベンチャーもものづくりで困っているので、同じような取り組みをすることで、日本の町工場が相談に乗れたらすごくいいし、そういうチャレンジにこの場所をうまく活用したいと考えています。ただのインキュベーション施設ではもったいないので、いろんな大企業にコミットしてもらい、新しい事業やものづくりが生まれる場所になればと思っています」
センターオブガレージには、コワーキングスペース以外に、シェアオフィス、個室、プレゼンテーションルーム、ラボなども併設されています。オフィスルームの個室は全部で8つあり、現在入居しているのは4社。残りの部屋も、7月には全て埋まる予定だという。
意外にも大きな機械はほとんど見当たらないが、ここは実際にものを作るための場所として機能しているのではなく、思考を目的とした場所なんだそう。
「大きなものづくりは、町工場でやった方が早い。だから、ファブラボみたいに作れる場所ではなく、人が集まって考えるきっかけの場所にしたいので、3Dプリンタみたいなちょっとしたものは置きますが、場所を貸し出してビジネスをするつもりはありません」
この場所や町工場との取り組みとして『墨田区』という場所を選んだのには、何か繋がりがあったのでしょうか?
「たまたま浜野さんと飲みに行って意気投合したのがきっかけです。それから何か一緒にやろうと、ぼくらが考えた研究所向けの実験機器を作ってもらったのがスタートです」
そうした繋がりから浜野製作所の浜野さんは、テックプランターの審査員だけでなく、センターオブガレージの初代ガレージ長にも就任されています。
「この場所をハブに、全国のいろんな町工場の人たちが繋がり、ベンチャーとものづくりができるようにするために浜野さんの力が必要で、一緒にやってくれる町工場がいて、そういうところに向けて情報発信していくことが大事です。だから、町工場の人たちが集まれる場所にしていきたいし、その地域の仕事が見られるのも魅力で、地域とベンチャーの接点を作っていきたいです」
こうした墨田区との繋がりから、リバネスでは区が行っていた産業基礎力再生基礎調査を2014年に受託し、3,551社の町工場に自転車を使って、自分たちの足で実際に見て回りました。
「町工場のデータベースなんて作っても意味がないし、どんな人がいるか分からないと本気で考えられないので、相手の顔が分かって、どこでどういうことをやってるかを知った方が発想がしやすい。ぼくの友達ですと言って紹介したほうが話が早いですし、リアルな感覚が分からないとうまくベンチャーと繋げることはできません」
「だから、スタッフ10人ほどで町工場を全て訪問しました。この調査は、定期的に行われてしっかりとした報告書が作られていましたが、それがあっても何も変わらない状況があり、じゃあぼくらは話した先で一緒に何かできないか考えるし、自立的に動いていこうと言って始まりました」
実際に現場を見てみていかがでしたか?
「行くと500くらいは廃業していて、一人で開けてるだけのところも1000くらいあり、行ってみて分かることも多かったです。シャッター通りと言われる商店街も、話を聞いてみると困ってないんです。頼まれるからやってるだけの方もいて、シャッター通りを課題だと思ってるのは本人たちじゃないんだなと。そうやって地域のコミュニティーも学びました」
地域自体も良くしていきたいというような想いもあるのでしょうか?
「そうですね。科学のイベントを墨田区でやったり商店街と連携できないかとかもやってはいます。製造業だと収益に直結すれば、その会社の存続に直接繋がるので、そこから突破口を作りながら少しずつ実績を作り、今では大田区や板橋区など他の地域でも、墨田区を事例にして取り組みを広げています」
今回募集するスタッフは、この巨大で他にはない新しい施設の管理・運営してくれる方。
ここが開いている時間は、朝7時~夜9時まで。日中は入居者の方や、別のスタッフも多いが、土日や夜は人が少ないため、この時間帯を中心に働いてくれる方を募集しています。
しかし、具体的な仕事内容を伺ってみると、まだほとんど決まっていないそう。これは、一体どういうことなんだろう。
実は、掃除や備品の発注といった細かな事務的な仕事は、全てアウトソーシングしており、明確にこれをしないといけないといった仕事は、現時点ではありません。ですが、例えば最大で120名入れるプレゼンテーションルームには、毎月さまざまなイベントが今後行われる予定で、イベント準備の手伝い、受付、入居する方が増えてくればその対応など、今後やるべきことは増えてきます。なにより作りかけの場所だからこそ、自分で仕事を作っていくことができるのも魅力です。
「ベンチャーの支援や相談は、他のスタッフが対応すればいいので、経験や資格等は問いませんし、空いてる時間は別の仕事をここでやってくれてもいいです。まずは、この場所にいて、しっかりと場を管理をしてくれることが最低条件です」
「その上でここに来て、新しいことをやりたいとか、人に出会いたい、繋がりたいと思う方なら大歓迎です。リバネスもグローカリンクも、新しいことをやる分には非常にポジティブな会社ですが、一般的なインキュベーションオフィスのようなおしゃれなセンスを持ち合わせてないので、人当たりが良いお母さん的な人が合うのかもしれません。ぼくらがこの場所で一番気にしたのは、耐荷重と天井高ですから(笑)」
一緒に働く常勤のスタッフは、他に2人。基本的には、シフトを組んで運営していく形になりますが、フルタイムで働けない人でも、土日だけ短時間だけといった、状況に応じたフレキシブルな働き方も可能です。
「要は、何かあった時の管理人としての役割になるので、状況に応じて動ける方。作りかけの場所で、これから入居する企業によってどんどん変わると思いますし、管理人になってくれた方の希望や能力によって新しいことを考えたり、施設のこと以外の仕事をお願いすることもできるかもしれません」
一緒にこの施設を管理・運営していく一人でもある、戦略開発事業部の佐藤さんにもお話を伺いました。
佐藤さんは、高校生の時にテックプランターの第一回目で、水陸両用車を作りたいといった内容で出場しました。それから、自分が作るよりも作りたい人を支援する方に進みたいと、グローカリンクに入社したそうです。
今はどんな仕事をしていますか?
「主にセンターオブガレージの運営と、ベンチャーさんがものを作りたいと相談に来た時に、それに合った町工場さんを繋げるような支援をしています」
佐藤さんの実家は、東大阪で自動車関連の町工場だったこともあり、町工場の方と打ち解けるのが得意なんだそう。しかし近年、東大阪の町工場も減少の一途を辿っており、佐藤さんの実家もほぼ閉鎖しているそうです。
そんな佐藤さんから見ても墨田区の製造業には、独特な文化があるそうです。
「自分たちの売上と同時に、隣の工場の売上も気にする関係が続いていて、ここの町工場が潰れそうだから、一緒にものを作ってお互いに幸せになる関係を作ろうってのも墨田ならでは。今のまま続けていこうと思ってるところはほとんどないんじゃないかなって思います」
今回グローカリンクで募集する方を選ぶ基準について、再度教えてください。
「今回の募集に関しては、ここがおもしろいとか魅力があると感じて、ここでの時間を有効に使えそうな方ならぜんぜん大丈夫です。やりたいことがある人には、じゃあそれができる場所にするにはどうしたらいいか、一緒に考えられると思いますし」
最後に、これからこの場所をどんな場所にしていきたいと考えられていますか。
「ベンチャーは、地域性は関係ありません。全国にもあるし、世界中にもある。そういう人たちと町工場みたいな地域性のあるコミュニティーが交わる場所にしていきたいです。なので地域の人たちは、重要なファンクションになってくると思うので、地域コミュニティに繋がりのある方とかは、すごいウェルカムです」
「地域の町工場はいろんなノウハウを持ち、価値を出せるすごい人たちがたくさんいるけど、収益性とか経営の話になった瞬間、下請けで大変なところも多いです。でも、ほんとは大企業よりもすごいことをやってる人もいて、そこがもっと活性化すればいろんな人たちを助けられるから、町工場にとっても新しい形が作れる場所にしていきたいです」
新しい挑戦をするベンチャーを地域に受け入れることで、そこにあった人や会社、そして技術が活かされる機会へと繋がるかもしれません。ここは、そんな出会いや化学反応を間近で見られる、とても刺激的な場所だと思います。