世の中を裏側で支える技術 有限会社岩井金属金型製作所
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ご応募ありがとうございました。
すさまじいスピードで変化をしていく、今の世の中。
明日には自分の仕事が無くなってしまうかも。と、不安を感じて安定を求める傾向の方も多いかもしれません。
ものづくりの世界は、変化の激しい世の中でも、コツコツと技術を積み上げ、しっかりと磨いていくことができます。そしてそれは、きっとあなたにとって無駄にはならない知識と経験となるはずです。
それがものづくりの醍醐味かもしれません。
なにより、前向きな向上心やひたむきな気持ちに応えてくれるのも、この世界だと思います。
墨田区八広は、東京大空襲をまぬがれ、古い建物と新しい建物が共存するエリア。今でも町工場が多く、ものづくりが盛んな下町地域です。そんな昔ながらの町並みが残る中に、スタイリッシュでモダン外観の建物があります。
ここは、金型を製造しプレス加工を行う町工場「岩井金属金型製作所」。
世の中にある大量生産されたモノは、そのほとんどが金型と呼ばれる型を用い、プレス加工という技術を使って製品は生み出されています。
岩井金属金型製作所は、この金型づくりから、さらに金型を用いて加工、そして最終的な製品づくりまで行うことができる技術を活かし、試作開発から量産加工まで対応しています。開発で得た情報を量産加工にもらさず注ぎ込み、製作のボリュームに合わせて簡易金型で対応したり、順送型などの自動型で対応したりとお客さまのニーズに合わせてフレキシブルに対応しています。
都内に工場がある利便性や、横の繋がりの強い下町ならではの幅広いネットワークを活かし、小さくても多種多様、そして他社で作れない製品を高品質で生み出します。
化粧品やライターのケースから、パソコン部品やランドセルの金具、灰皿といった一般製品から、大型の機械の部品を作ることも多く、一見すると何に使われるのか分からないものも多いのですが、話を伺ってみると誰もが使ったことがある、見たことがあるものも多く、世の中にある製品の裏側を支えていることがよく分かります。
そんな岩井金属金型製作所で、一緒に世の中の裏側を支える仕事をしてくれる『技術者』を募集します。
知識と経験をしっかりと身に着け、手に職を持ちたい方、ぜひ読んでみてください。
昭和10年に創業された同社は、現在3代目である岩井保王(やすお)さんが代を引き継ぎ、奥さんの光恵さん、そして2代目で現会長の巳代治さんと、パートさん1名のアットホームな家族経営の小さな町工場です。
まずは、募集の経緯を保王さんに伺ってみたいと思います。
「仕事の幅を広げたいと思ったときに、今は自分が工場長であり実働部隊なわけです。目の前の仕事がいっぱいで、いろんな業界を知る、新しく接点を持つ、時間をかけて開発するといったことに集中ができず、今の人数では次の一歩を踏み出すことが難しいのが採用のきっかけです」
「お断りしている案件もあったり、せっかくオファーをいただいて関わっていたのに、これ以上のキャパは難しく途中でお断りすることもあって、ほんとに悔しいんです」
岩井さんの工場は、4名で切り盛りしています。一人一人が担当する作業も多く、大企業のような人材教育システムがしっかりと整備されているわけでもありません。そのため、経験のない方の採用は難しいのが正直なところで、広く募集をかけることに長らく二の足を踏んでいました。
しかし、こんなきっかけから未経験の方の募集をしてみようと思ったそうです。
「最近、自分の手でモノを作る喜びを経験していない子どもが多いように感じます。例えば、ハサミで真っすぐ切れなかったり、昔ながらの缶切りで缶を開けることができない。じゃがいもの皮も剥けないなんて話も聞くと、ものを作る自信も無ければ、喜びも分からないんじゃないかって」
「それでも、生活が便利になっているから不便はないんですよね。できあがったものが簡単に手に入るならそれでよくて、作る側になりたい、なれるというイメージを持てないのかもしれません」
昨今、ものづくりを目指す方が減っています。それは、岩井さんが言うように、便利になりすぎたことで日常生活において、自分自身で手を動かすという機会が極端に減ってしまったことも関係しているのかもしれません。
そんな現状を危惧し、自分たちの世界も今まで通り待ち構えているだけでは、あまりにも間口が狭いのではないか。そう考えて、積極的に経験がない方を受け入れられるよう体制を整え始めたそうです。
「極端に言うと、スイッチの入れ方ひとつから教えるような時間はなく難しいと思っていました。でも、私たちの仕事って簡単に誰でも覚えられることではないし、短期間で一人前になれないのも間違いない事実です。でも、それでお互い諦めてしまうのはあまりにも間口が狭いですし、少しでも簡素化したりハードルを低くできないかと、こちらも考えていかないといけない時代だと感じています」
「それに、もしかしたら新しい風が必要で、ものづくりが好きな方で、新しいことにどんどんチャレンジしてくれるなら、これまでの経験も生かせるんじゃないかと思い直したんです。自分なりに積み重ねを模索し、成長の機会だと謙虚に思ってもらえるなら、経験のない方でもいいと思います。あとは、こちらの構え方を変えるために、新しい取り組みを始めました」
家族経営の工場は、誰かに技術を教えることがほとんどありません。そのため、マニュアルは全て岩井さんたちの頭の中。それを伝えていくのは、決して容易なことではありませんが、そこの壁を乗り越えなければ、これから先この工場に限らず、ものづくり全体の継続は難しくなってしまうかもしれません。
そこでまず始めたのが、マニュアル制作です。
「うちはひとつひとつ作るモノが違い、製作法も違います。それをその都度聞かなくてもできるマニュアルの制作を山のように進めているのですが、分かる人が作るのではなく、気が付いたことや言われたことをみんなでどんどん書き込んで一緒に作り上げています。積み重ねればノウハウにも繋がり、私たちもたまに来る仕事は忘れることがあるので、アナログですがそれができれば新しく入ってくれた方もやりやすいと思います」
「また、今までは口で言ったことを覚えてもらうやり方でしたが、それこそ作業風景を動画に撮ってもらい、アーカイブして何度も見て勉強できる体制も作ります。いわゆる昔ながらの教え方を払拭し、垣根を取って新しい人が覚えられる体勢に頭を切り替えています」
金型を使ったプレス加工は、単純な作業が多く覚えるのは比較的容易です。それに対し、覚えることが膨大なのが金型の製作ですが、これも昔ながらのやり方を踏襲しているところが多く、アップデートしていく余地はたくさんあると言います。
「私たちは、1から10までの工程が体に染みついてて、そういうものとして済ませてる部分があります。でも、実は省ける作業もあるので、『この作業は本当に必要なのかどうか』を一緒になって考えてもらいたいです。CADをオンラインに繋げて便利にするとか、フロッピーディスクはもう廃止しようとか。そういう提案を積極的にしてくれると、会社としてもいいですし、早く熟練した技能士にもなれると思います」
ものづくりを目指す方が減っていることの要因として、手を動かした経験が少ないことに加え、未だにテレビなどで、町工場をマイナスイメージで描かれることが多く、どうしても町工場に対して、否定的な印象を抱いてしまう人も少なくないのかもしれません。
「以前ドラマの監修をしたときに、『どういう嫌がらせを受けましたか?』と質問され、ドラマの中でもいじめられる製造業者が描かれていました。一般的なイメージっておじさんたちが暗い作業場で借金まみれみたいなイメージがあるのかな。まあ、実際うちも建て直す前の工場は薄暗かったですけど(笑)」
テレビで描かれるように、工場内は薄暗かったり、体を動かすので汗もかくし、汚れる作業があるのも事実です。しかしながら、テレビとは違い実際の現場への風当たりは、確実に変わっていると言います。
「お客さんは、対等に私たちに接してくれ、ほんとうに評価をしてくれるようになりました。金額を叩かれることも今は無くなってますし、非常にリスペクトしていただいてます。大きな会社からもご相談いただいたり、コロナでリモートがスタンダードになったことで、他県からも垣根なく問い合わせもあります」
岩井さんの工場は、2019年2月に工場の建て替えを行ったことで、新しくとてもキレイです。テレビで見る多くの方がイメージする、薄暗くて汚い場所ではありません。
しかし、東京都内での工場の建て替えは容易なことではなく、大きな決断となりました。新工場になっておよそ3年。稼働してみていかがでしょうか?
「建て替えてよかったです。実際、確実に働きやすくなりましたし、やはり新しく工場を建てるというのは、お客さんも覚悟を感じてくれますし、まだまだやるよって前向きな気持ちが、お客さんにとっての安心感に繋がっています」
「それに、建物が薄暗いとか、狭くて油まみれで汚いみたいなことが一つでも払拭されると、イメージも変わります。以前は夏は暑いし冬は寒かったけど、今はすごく快適で大きな機械も迷いなく入れられるってところも大きいです」
工場新設後、世界はコロナで難しい状況に陥るものの、それでも新工場には新たな依頼が増え、売り上げが大きく凹むことはないどころか、少しずつ伸びています。
これには、多岐に渡る取引先を抱えていること、そしてものづくりの現場が減っていることも関係しています。
「波はあったとしても取引分野が多岐に渡るので、低迷している業界もあればそうでないところもあって、大きく凹むことはありませんでした。コロナで工場を停止したり、今までとは違う流れに予測ができず怖かったりもしましたが、意外に忙しくて売上はよかったです」
新規の依頼は、自社のホームページからの問い合わせが多く、実例を載せれば翌日には問い合わせが入ることもあるそうで、岩井さんのような小さな工場が持つ技術や知識を、多くの企業が求めています。
「私見ですが、まだ現存する工場に何かネタを求められてる印象が強いです。『一緒に作りたいんだけど力を貸してくれませんか?』とか『やり方が分からないので岩井さんの考えるやり方で進めて欲しい』と、技術相談を受けることもあります」
「それに、やはり金型屋さんやプレス屋さんが減ってるのもあると思います。相談を持ち掛ける先が少なくなる中で、うちは新しいものに意欲的に取り組み、わりと取引分野が幅広く、やれる加工であればなんでもやるので、もしかしたらそこで評価いただいているのかもしれません」
ものづくりの工場が一つ減ると、そこの仕事は別の工場へと流れる。昔はそれでも大丈夫だったが、今は工場がどんどん少なくなり、一つのところへ仕事がどうしても集中することになります。
依頼できる工場が減っていくことに業界的には危機感を感じる一方で、まだまだやる気のある工場にとっては、大きなチャンスがあるとも言えるでしょう。
「今までプレス金型業界において、絞りだけ、板金の曲げだけ、潰すだけなど、いろいろとすみ分けがあったんですがもう無くなりつつあり、この加工はプレスかな?みたいな曖昧な感じで問い合わせがくることも多いです。だから的外れのご相談もあるんです」
「でも、だんだんものづくり全体の垣根が無くなり始めていて、全てにおいて知見がある人にとりあえずぶつけてみる。できないことも他にできるところ知ってるかもしれないと、とにかく持っていけば相談に乗ってくれるみたいなのが、今後は必要とされているように思います」
岩井さんに相談すればなんとかしてくれる。そんな駆け込み寺のようになっていくうちに、金属だけでなく紙加工の相談など、業界の垣根を越えた仕事も増えているんだそう。
「できることはできるだけやるようにしていて、異業種会で一緒になった社長さんから、厚くて抜くのが大変な『紙の加工』に、うちを思い出してくれたんです。カミソリの歯を付けて抜くのが紙業界の抜き方ですが、それだと厚さがあるとなかなか難しいし、工程も多くなってしまいます」
「既に納期も迫ってて、うちは油だらけだから紙の仕事は緊張するし、お断りしてもいいくらいだったけど、すごく困られてたのでそのまま帰すわけにもいかず、一台を専用の機械にしてやったらとても喜んでいただけて。他でできないことができたのはすごく嬉しいし励みになりました」
岩井さんたちが仕事を受ける決め手は、自分たちをどれだけ必要としてくれているかどうか。そして、新しい業界の場合はどれだけワクワクできるかということを重視し、仕事を受ける受けないも自分たちでしっかりと選んで決めています。
そんなさまざまなところから必要とされる、岩井さんたちの技術。
しかし、作った製品には、知的財産や特許の観点から守秘義務が交わされることも多く、表に名前が出ることはほとんどありません。これは、下請け企業がほとんどそうです。
たとえ世の中を支えるような大きな仕事でも、自分たちでも公表することはできないため、この仕事の内容や魅力を伝えていくことにおいて、難しさを感じることもあるそうです。
「量産品にはまず金型が使われるので、金型を使ってプレス加工で作られるものって、世の中にいっぱいあります。でも、みなさんが普段使うものでも、それを作る金型にどんな喜びがあるかは分からないですよね」
「でも、確実に世の中の見えない部分を作ったり、底辺を支える仕事ではあります。実は、世の中を動かしてるとまでは言わないけど、すごい肝の部分を担っています。だから、そこを光と思ってくださる方がいるといいなと思います」
一時期、町工場が自社で製品を生み出し、下請けを脱却する流れが生まれました。
しかし、岩井さんたちはそこで改めて自分たちの立ち位置を見つめ直し、下請け脱却を図るのではなく、逆に下請けとして裏側をしっかりと支える道を選びました。
「自社製品を作るか迷いもありました。でも、うちはそうじゃないなって舵を持ち直しました。表に出て商品を作るより、陰で支える品物をしっかり期待に応えて作っていく。世の中の技術を高めていくことに携わる方が性に合っているなと。だから、日本の精度や品質が高いとよく言われますが、細部に手を抜かず裏側で携わってる人がいることも知って欲しいです」
「それに、有名なロボットの一部とか、見えないところで使われてるのって、ふふふって感じがして私は好きなんです。見に来てもらえたら具体的に説明できるものも多いので、少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ工場へ見学に来ていただきたいです」
目まぐるしく変わっていく世の中。
新しい技術やサービスが次々に生み出されていて、今は最先端だった仕事も数年後には、別のものに置き換えられてしまっているかもしれません。
「仕事を積み重ねたものの、ある日突然すごく古いと呼ばれてしまうのは怖いと思います。でも、工場で手を動かしてきたことは、確実に積み上がり自分のものになります。もちろん突然すごい機械ができる可能性もあるけど、やってきたことが無駄になることはないはずで、より無駄にならないものだと思います」
岩井さんたちが使う機械には、NC言語と呼ばれるものが使われているが、これは50年ほど変わっていません。また、CADの操作も基本的には昔のままで、このあたりの変化は緩やかです。しかし、その一方で3Dプリンタなどへ急速に置き換わっている部分もありますが、そうした新しい技術にも対応できるのが、この世界のおもしろいところです。
「この業界不思議で、新しい技術や新しい風が吹くと、さらにその上をいく技術が、要は人間が手を動かすことで生まれます。一番最たるは、コンピューター制御の機械が登場したとき、手で動かす技術者はいなくなると危惧されましたが、さらに高度なものを作る方向へと進みました。AIで金型が自動化できるかと言うと望みが薄くて、やはり人間が考えなければ到達できない領域が残されているように思います」
下請け企業として、製品の裏側を支える仕事でありながらも、お客さんと常に対等な立場で仕事をする姿は、これまでの下請け企業のイメージとは少し違うかもしれません。
まだまだ古い体質が残る部分もきっとあるはずです。しかし、町工場を取り巻く状況や、働く環境、そして岩井さんたちの考え方も、確実に良い方向へと変わり始めています。そして、それをさらに良い方向へと加速させて変えていけるのも、今このタイミングかもしれません。
一緒に岩井さんの工場の未来を築いてくれる方からのご応募、お待ちしております。