“つくる”の先を見据えたデザイン セメントプロデュースデザイン
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世の中のあらゆるものは、つくり手の想いやデザインによって作られていると言っても過言ではありません。身近にある便利な道具も、街を彩る建築物も、さまざまな想いや課題解決のカタチとして実現されています。
では、よいデザインとは一体何でしょうか。
デザインの可能性を追求しながら、さまざまな企業の課題に向き合い伴走する会社があります。それが、デザインプロデュース会社の『セメントプロデュースデザイン』。
本社を大阪・京町堀に構え、関東の拠点として東京スカイツリーの麓、墨田区に東京事務所があります。1階には彼らが運営する、つくり手とつかい手をつなぐショップ『コトモノミチ at TOKYO』が併設されています。
セメントプロデュースデザインは、中小から大手企業まで多くの会社の事業を、デザインを通してプロデュースする会社です。主に、商業施設の広告プロモーションや企業のWEBデザイン、パッケージやプロダクトデザインなどを手がけています。
代表の金谷勉さんが、広告制作会社での勤務を経て28歳で独立し、1999年に創業しました。
「自分たちが面白いと思うことをできる会社でありたい、というのが創業時から変わらぬ根底にある思いです」
大阪・京都・墨田区を拠点に、さまざまな業界から注目を集めるデザイン会社へと成長したセメントプロデュースデザインは、ひと口にデザインと言っても業務範囲は幅広いのが特徴です。大きくは、プロデュース・デザイン・店舗運営の3つに分かれて、合わせて25名のスタッフが働いています。
今回、新たにこの3職種をそれぞれ担える仲間を募集することになりました。
2019年に職人達の技術を学び、伝えるショップとして『コトモノミチ at TOKYO』がオープンするのに合わせて、墨田区にも東京事務所を構えたセメントプロデュースデザインですが、そもそも墨田区との接点はどこにあったのでしょうか。
「2014年頃だったと記憶していますが、墨田区主催の区内事業者とクリエイターとの『ものづくりコラボレーション事業』に参加したのがきっかけです。2年目、3年目には講演する機会も増え、墨田区の事業者との接点が増えていきました」
「最初は、町工場の方たちを見守るような思いでいたものの、ものづくりが属人的になっていたり、技術力を持つ工場などが自社の事業展開に悩んでいたりと、さまざまな声を耳にしました。そんなときに墨田区役所のみなさんと出会い、さまざまな方と繋がるうちに、直接企業とやりとりする伴走支援としてコンサルティング事業が始まっていきました」
この会社では、グラフィック・WEB・プロダクト・空間などのデザイン制作のほか、企業コンサルティング業務やセミナー、講演会、商品開発企画、OEM企画販売、さらには直営店の運営まで、幅広い事業を手がけます。
開発・製造・流通までを一貫して担うのが、セメント流のデザイン。
創業当初は、さまざまな分野でクリエイティブワークをこなす、グラフィックデザイン事務所としてスタートしたセメントプロデュースデザインが、コンサルティングやマーケティングも含めた企画・提案をすることになった背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
「かつてデザインは、町工場の職人たちと同じように手仕事の時代があり、MACが世の中に出てきたタイミングで、技術をお金に変えるのが難しい時代がやってくるという危機感を抱きました。あと10年もすれば、あらゆる作業はマシン側に吸収され、仕事の仕方も大きく変化すると思ったんです」
そうした思いから、デザイン案件だけでなく、企画から入る事業を手がけるようになっていき、売るためだけのデザインではなく、取引先とコミュニケーションを交わし、課題の抽出や目的の整理といった本質に迫りながら企画・提案をするスタイルへと進化していきました。
作って終わりにしないという使命感や責任感を持って、市場に売り出していくところまで一緒に行う姿勢が、多くの企業の共感を生んでいます。泥臭さは、セメントプロデュースデザインの真骨頂です。
大阪と東京には現在、3人のディレクターがいます。代表の金谷さんもそのうちの1人ですが、役員でありディレクターとしても全国各地を飛び回る三嶋さんもまた、数々のプロデュースを行ってきました。
この日も、東北出張から戻ってきたばかりでしたが、ディレクターの仕事についてお話を伺いました。
「当社では、各地で年間80社から90社くらいのつくり手と出会い、彼らに伴走してデザイナーたちと連携しながらチームでものづくりをしていきます」
三嶋さんは、前職でアパレルのSPA(製造卸小売業)に携わり、海外勤務も経験するなどアパレル業界のものづくりに触れてきた経歴を持っています。金谷さんと同じように、ものづくりへの違和感や危機感を抱いたことがきっかけで、プロデュース職を目指したそうです。
「服の製造工程が海外に委託されていたので、安い工賃で作業をする彼ら自身にものをつくることに愛着が湧いておらず、単なる作業になってる光景を目の当たりにしました。そんな現状に違和感や危機感が生まれて、モノをつくるだけでなく、その先を作りたいと思うようになっていったんです」
海外での経験を活かそうと日本に帰国し、セメントプロデュースデザインが主催していた交流会に参加して会社の思いに共感を覚えたことから、転職を決めたそうです。
数々の取り組みの中から、海外企業とのコラボレーション事例を教えてくれました。
「最近、印象的だった取り組みは、福島の伝統工芸品と台湾のクラフトビールを掛け合わせたプロジェクトです。2021年8月の始動から、なんとわずか半年でローンチというスピードで企画・開発、販売まで行ったんです」
日本と台湾の食文化と器文化の文化交流からスタートさせ、2つの技術を高め合って製作した『ビアタンブラー』と『クラフトビール』を開発しました。
地域の職人と台湾のクラフトビール会社を繋いだ結果、互いの強みを活かし合ったオリジナル商品が誕生し、それぞれの価値を高めることに繋がりました。もちろんこれまでの技術や企業努力があるからこそのコラボレーションですが、出会う機会を作ったのは、担当の三嶋さんです。
これが実現できたのは、どんな人やモノがマッチングすれば相乗効果が生まれるのか、ストーリーを組み立てる力があったからこそ。
「私たちは、できたものは自分たちでも売るという姿勢を大事に、企画から開発、流通まで一貫してやってこそ本当の意味でデザインだと思っています」
ディレクターは、全国各地の工房や工場を訪問して現場を見学したり、担当者たちにヒアリングをしたり、ときには夜まで企業や製造現場の人たちと酒を酌み交わすことだってあります。
名だたる企業とのコラボレーションや革新的な企画・開発の華やかに見える実績の一つひとつには、こうした地道なコミュニケーションの積み重ねがあるからこそ実現しています。
信頼関係を築くことは決して簡単なことではありませんが、そこを怠らないからこそ、セメントプロデュースデザインには規模を問わず、全国各地から相談がやってきます。
三嶋さんは、自社の人材育成の執行担当としての役割も担っています。2022年秋から部署の垣根を取っ払うという異例の組織改変を行いました。チームで伴走することの実現度を高めるために、必要なことだと判断したからなのだそうです。
どんな人材育成をするのか、入社後のステップについてもお聞きしました。
「当社では、3年以内に一人前にすることを前提に人材育成をしていこうと思っています。東京での採用であっても、大阪本社での業務をすることもあるかもしれませんし、東京事務所での業務に加えてショップの店頭にも立つこともあります」
企画からマーケティングまで幅広くデザインを手がけるため、各職種の経験や視点はどの業務においても活きると考えているため、各業務を一通り経験することにしています。業界や職種の経験、未経験に限らず、セメント流のデザインをインプットするために大切な期間です。
「当社は、コンサルティング事業もあります。進め方や考え方のメニューのようなものはありますが、全ての企業様に当てはまるわけではありません。組み替える力や掛け合わせる力が必要になってきます」
「主体性を発揮して、地域と掛け合わせられる人。そしてさまざまなプレッシャーの中でも、臆することなく提案する、思考するという姿勢を持って行動したい人にはきっと楽しんでもらえると思います」
では、企業の課題や想いをカタチにしているデザイナーの仕事はどのようなものなのでしょうか。
デザイナーの福森さんに、やりがいやセメントプロデュースデザインで楽しめるデザイナーとはどんな人なのかを伺ってみました。
29歳で美容師から転身し、かねてより興味のあったデザイナーの道へと進んだ、福森さん。
現在、東京のチーフとして各プロジェクトに取り組み、グラフィックからパッケージ、WEB、プロダクト、空間設計など、デザイン全般を担っています。それだけでなく、展示会ブースの空間設計、クラウドファンディングのお手伝い、海外販路の開拓をバックアップするなど、多岐に渡ります。
異業種からの転職に不安などはなかったのでしょうか。
「お客さまと話すのは得意だったので、そこを活かしたいと思いました。何かに特化したデザイナーではないので、あらゆる角度からデザインをするための技術の向上にプラスして、お客さまとのコミュニケーションを大事にしてきました」
福森さんが以前の担当者から引き継ぎ、各種デザインを担当する取り組みについて、東京都葛飾区・墨田区にある金属金型を製造する『石井精工』の専務・石井さんにも同席いただき、オリジナルブランド『ALMA(アルーマ)』の製作背景や、今後の展開についてもお聞きしました。
ALMAは男性をターゲットとしたピンズアイテム。穴の部分にアロマを垂らすと、やわらかな香りが漂い、着用する人のリラックスを誘うアイテムです。販売開始からおよそ6年間で、約2万個もの製造を達成し、海外では台湾をはじめ中華圏などアジア地域に販路を拡大してきました。
石井精工にとって、職人不足や下請け体質からの脱却を図り、商機を見出したいと考えていたところ、金谷さんとの出会いがありました。そして、金属加工技術の強みを活かした自社のオリジナル製品の企画・開発に繋がりました。
「販路や販売ノウハウのない僕らにとって、デザインだけでなく販売までの道筋やフォローも一緒にしてほしいとご相談し、金谷さんがディレクターとして入ってくれました」
当時のデザイナーとプロデューサーの金谷さんは、石井精工に何度も通い、互いに信頼を構築しながら、技術と企画の本気のぶつかり合いの中で製品を作っていきました。もちろん作ることだけでなく、その先の販路も見据えての取り組みです。
国内での販売スタートから海外展開まで、一つひとつのステップを経て、石井精工にとっても手応えを感じているようです。
「ALMAは、当社のメイン事業ではないですが、会社の顔になりつつあります。僕らは、これを細く長く続けていけるようにしたい。これからも協業で関係性を築いていきたいですね。ALMAは、セメントプロデュースデザインさんと一緒になったからこそ、できたブランドだと思っています」
「ディスカッションも気兼ねなくできる」と言う石井さんからは、セメントプロデュースデザインに信頼を置いていることが伝わってきます。
「つくり手とデザイナーの寸法感って違うと思うんです。理論上は問題ない設計でも、実際に作る職人からすると違和感があったりします。職人は1ミリ単位で調整をするので、デザイナーとは見ているポイントが違うと思うんです。だからこそ、意思疎通を図ることは大事ですよね」
そんな石井さんの想いも受け止めながら、福森さんは新たにALMAの新商品にも取りかかっています。その中でも、金谷さんや前担当者の想いも受け継ぎながら、石井精工と同じ方向に向かってものづくりをするために、できるだけ製造現場に赴く時間を大切にしています。
「現場に行くことでタイムラグが生まれないんです。デザイナーの意図も伝えられますし、技術的なところも現物を見ながら理解が深まります。デザインとしてカタチになった後も、展示会や販売などその先のフォローまでやってひとつの商品開発だと思っています」
「携わった商品に責任を持っていたい。だから作って終わりではなく、どんな反響があるのか気になるんです。自社運営のショップがあるので、お客さまから前向きなフィードバックもたくさんあり、その先を見られるのは当社の強みだと思います」
ユーザーに近いところでデザインの仕事ができるということは、やりがいにも繋がる部分ということもあり、必ずしも転居は伴いませんが、福森さんも墨田区に引越してきたそうです。お客さまと直接やりとりしながら、デザイナー職であってもときにはプロデューサー視点で横断的な取り組みもするので、さまざまな思い入れも生まれやすい職場環境なのでしょう。
対応の幅が広いデザインの仕事。そんな中で自分のクリエイティブに挑戦したい人には合っているのかもしれません。
つくり手たちの想いを受け止めながら、本質的な課題がどこにあるのかを見つけ出し、今できる最善・最良の提案をすることは、店舗運営も同じです。
墨田区にある『コトモノミチ at TOKYO』は、各産地の技術とセメントプロデュースデザインがコラボレーションして生まれた商品が並んでいたり、職人とつながれる交流会、ワークショップなどの体験もできたりする、ショールーム兼イベントスペースのショップです。
手がけた商品を市場に出すことのひとつとして大事な役割を担う、コトモノミチの運営をしてくれる店長も募集しています。
各地の職人や技術に触れられる場であり、エンドユーザーからさまざまな反応をもらえる場所。店内のレイアウトやイベント企画、来店いただいた方に一つひとつの商品の背景を説明すること、ユーザー目線の意見を聞き取ることも、よりよいものづくりには欠かせません。
店長は、営業や広報・PRといった観点から店づくりを任されます。こうした販売経験は、企業視点、ユーザー視点から提案できる力を養うことに繋がるので、プロデューサーとなった場合にも大いに役立ちます。
日々、さまざまな意見を聞きながら試行錯誤して販売経験を積みたい人にとっても、挑戦できる場になるはずです。
最後に、金谷さんの考えるデザイン会社とは何か、そして目指す先をお聞きしました。
「周りの人から『どんなデザイン会社にしたいのか?』と尋ねられることがよくありますが、自分自身がどうすればいいか分からず困ったときに、デザインのことなど何も知らなくても、相談したいと思う会社。なんとかしてくれる会社。そして、どんなことでも全力で相談に乗ってくれそうな会社と、大抵は答えています。それが創業時から変わらぬ根底にある思いです」
「スタッフとも話しながら、セメントプロデュースデザインが目指す先は、みんなに愛されるこれまで知られることのなかった中小企業の顔をつくるということ。日本中の中小企業が自分たちの誇れるブランドを持つために、私たちは『デザイン制作会社』から『デザインとプロデュースで伴走できる会社』へと成長していきたいと思っています」
さまざまな角度から対応する大変さはあれど、お客さまの一歩一歩が未来につながる過程であると捉えて切り替えられる人が、この会社で自分を発揮する上で合っているのかもしれません。
デザインには、未来を作る力がある。セメントプロデュースデザインは、伴走する姿勢を貫き、これからも寄せられる相談に向き合い、たくさんの未来を作っていこうとしています。
ときに軽やかに、ときに泥臭く。さまざまなモノやコトをプロデュースしたい人はこの会社で挑戦してみませんか?
文章:草野 明日香
写真:Kanako Nakamura
編集:のしごと