縁も仕事もしっかり繋げる溶接屋 株式会社丸昇酸素工業所
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ご応募ありがとうございました。
「今の溶接は、自動機にセットしてボタンを押せばできてしまいます。だから、手付け溶接ができる人は年々減っていて、そういったロボットでできない仕事も、うちは大事にしたいと思っています。」
溶接は、簡単に言ってしまうと鉄と鉄をくっつける。お客さんから品物を預かって、AとBをくっつけてCにして渡すというイメージだが、その作業のほとんどが自動化されはじめてきている。
墨田区には、”溶接屋”としてやっているところは、もう四、五軒ほどしかないそう。
そんな溶接屋の一つが墨田区八広にある株式会社丸昇酸素工業所だ。
この昔ながらの手付け溶接の技術を今も守りながら、さらに大量生産もこなす溶接屋で、一緒に働いてくれる正社員を募集しています。
墨田区の八広駅から歩くこと10分弱のところに、株式会社丸昇酸素工業所はある。
1967年4月設立の同社は、今までに二、三度の引越しを経ているが、近くには町工場が今でも多く、住宅街と工場が共存している地域だ。
ここで働く従業員は、五人(うち一人が女性)。
以前は大田区から通っていた方もいたそうだが、今は全員が区内から通う方ばかりなんだそう。
二件隣には第二工場があるが、二つ合わせても既に手狭になってきているくらい、仕事量は増えているそうだ。
社名にある酸素はどういう意味ですか?
「今は酸素溶接というのはほとんどないですが、電気の溶接機が発達してなかった頃、酸素溶接って種類があって、そのなごりですね。溶接屋のことを酸素屋といっていたので、〇〇酸素のように酸素と付く名前のところは大体が溶接屋だったりします。」
このあたりもマンションが増え、一見すると工場と分かりにくいようなところも多くなっていたり、音や臭いにも気をつかう機会が増えたそうだが、シャッターの中を覗いてみると昔ながらの町工場の風景が今でもしっかりと残っている。
現在、2代目社長である町田勝さんにお話を伺った。
今回、人を募集される理由は?
「仕事は忙しくさせてもらってますが、溶接業って業種はどんどん人が減ってきていて、後継ぎがいないって問題に直面しています。そんな中、興味があってやってくれる人がいれば、どんどん仕事を取ってこれますし、人材を持っていれば営業もしやすいんです。」
ここは元々、お父さんである町田昇さんが一人で創業した。
41歳の町田さんは、26歳の時にここで働きはじめ、去年の12月から、世代交代した。
「前は鋼材屋のトラック運転手をしていたんです。三兄弟の末っ子だったんですが、親父の後を継ぐ人がいなくて、じゃあ俺が継ぐかってそんなことがきっかけでした。今一緒に働いている仲間は、前職で一緒だった奴もいるんですよ。」
「最初は親父と二人でやっていましたが、そういった仲間を社員として雇うことになったりして、この人たちを養っていかないとという責任感が出てきて、5年前にはすみだ塾にも参加しました。」
「最初ここで働き始めた頃は、親父が個人でやってた時だったので、自動のロボットというのは一つもありませんでした。
溶接は、鉄と鉄をくっつける仕事なんですが、手で一個一個やる作業、要するに溶接と聞いてイメージが湧く、面をしてやるあの作業を親父と背中を向き合わせてやるっていうスタイルだったんです。でも、手で一個一個溶接していくというのはお客さんの要望にはもう間に合わなくなりました。」
大量生産に合わせて、導入したロボットは毎日フル稼働している。
「そこからお客さんの要望に応じて、数の出るものを取ってきたので、自動でできるロボットを導入しはじめたんです。それによってどんどん生産数を増やしていって、従業員も増えていきました。」
「今、溶接屋さんはどんどん減っています。辞めていくところに理由を聞くと、たいがいが高齢化なんです。頼んでる溶接屋はいい年で、この人がもし亡くなったらうちの仕事はどこがやってくれるんだろうって。そういったこともうちの仕事が増えてる要因です。」
「墨田区内にはまだ溶接屋さんは残っていますが、意外と埼玉の川口の方に仕事が流れていたりしていて、墨田区に溶接屋があったんだって言われることもあったり。今では、墨田区には溶接屋は10件くらいしかないと思います。それに、溶接屋としてやってるところと、溶接もできるよってところがあって、溶接屋としてやってるところは知ってるところだけで四、五件ほどになってしまいました。」
「主に作っている製品は、自動車部品になります。分かりやすく言うとボンネットを開け閉めする際に、ガチャンと噛むロックの部分ですとか、足回りとかのパーツ、車体のフレームなどで多い時だと月産で4万~5万個作ることもあります。
遅延したりすると、自動車を作るラインが自体が止まってしまうので、納期に関しては非常に大切にしています。」
溶接は、品物が成り立つうえで一番最後の方の工程になることが多く、どうしても納期があまりない。
時期的な波はあまりないそうだが、新規部品の立ち上げ時など忙しい時期は夜遅くまで工場の電気が消えることはないそうだ。
奥が溶接前の部品で、手前が奥の二つを溶接することで一つの製品にしたもの。
車を見ると「あ、これ自分がやった部品だ」なんてこともよくあるそうだ。
他には、ホームセンターに卸してる建築金物系の製品も作っているそうで、お店でも飾ってあったりするので、そういったところで、最終的な製品を見て実感が湧くことが多いそうだ。
どんな方を求めていますか?
「ロボットから入ってしまった社員は、セットしてボタンを押せばできてしまうので、手付け溶接ができないんです。そんな中、手付けの仕事ってだんだんと増えてきています。ロボットでやる量じゃない、急ぎでつけてほしいって仕事の時に、手付けで一個一個こなしていくんですが、今ほとんど僕一人でこなしています。
手付けは、未経験から入って任せられるようになるには、最低でも三年くらいはかかりますし、今働いてるメンバーもほぼ未経験者ばかりで、ロボットの作業もあってなかなか手付けにチャレンジできていません。」
「そこまでちゃんとした研修はないけど、講習みたいなのは行かせたりしていて、新しい考えを持った方が入ったり、入ってから技術を磨いて、今までできなかったことにも挑戦ができるようになりますよね。もっとこういったことできますよとか、そういったアドバイスも僕には欲しいし、こういったことやっていきましょうよって言ってくれる社員が欲しい。今、全部僕ができるできないの判断をしてやってるので、社員からこういうのやりましょうよ!みたいに積極的に言ってくれる方がいいですね。言わば、右腕となるような。」
ロボットは、CADといった難しいプログラムが必要なわけではなく、最初に動きを教え込んでしまえば、あとは治具を載せ替えたり、確認作業の繰り返しで簡単にできるそうだが、今はロボットを動かす人も足りていない状況だそうだ。
「今は全部で六台あって、そこにほぼ四人がついています。でも、それでも空かしてしまってるロボットもあってもったいないので、もう少し人がいればもっと分配して効率よくできるようになりますし、ひとりひとりの残業の負担も減るんです。」
この仕事の大変なところは?
「単調な作業ですが溶接は重要工程なので、根気よく集中してできるかというところと、新しいことに挑戦していけるかというところですね。
あとは、やはり火傷ですね。ちょっとした火傷は多いです。熱いものも触りますし、工具を使ったりするので切り傷も多いかもしれないです。」
手付け溶接の様子を見せていただいたが、真夏でも全身を覆う防護服のような格好で行うが、それでも火花がどこからか入ってきてズボンの中まで熱いときもあるんだとか。
ここで8年間働いている小笠原さんは、町田さんと前職で一緒に働いていたメンバーだ。
「以前は、トラックの運転手をやっていたんですが、社長に引っ張ってもらいました。やりがいはすごくありますが、やはり人が足りていないです。忙しい時は忙しいですし、遅い時は22時とか23時とかになったり、それで足りなければ日曜日に出ることもあります。」
工場の雰囲気はどうですか?
「自分が社長に引っ張ってもらってきましたし、他もほとんどが知り合いで入社してきていていて、繋がりがあって入って来てるので、しゃべりやすいですし仲はいいですね。」
一緒に働く方はどんな方がいいですか?
「自分たちが結構歳なので、やっぱり若い人がいいですね。未経験の人でも、最初は教えますのでそれで馴染んでいってもらえたらいいと思います。」
小笠原さんは、今年40歳だそうで実は町田さんとも歳が近い。
小笠原さんから見て町田さんはどういう印象ですか?
「社長は分からないことがあったりしたら聞きに行けば、ちゃんと丁寧に教えてくれて頼りになる人ですよ。」
人を雇ってみて大変だったことは?
「身内以外の人を入れてみて感じるのは、仕事がある時とない時との気の使い方ですね。残業ゼロだと、給料が少なくなってしまうので、給料を渡すときに辛いんです。忙しければ、よく頑張ったねって言えるんですけど。」
「あとは、この仕事に対する俺の想いが、彼らに伝わってるかなということ。お客さんから要望されたとおりにやって、お客さんからちゃんと認められるようにやっていかないといけないんだって心構えでやってくれてるかなっていう。
ただボタンを押して出来上がったものをどんどんこなしていって、時間から時間までやればいいやっていう考えじゃなくて、みんなで盛り上げていく、うちに出してれば間違いない仕事だっていう評判が出るようなところに持っていきたいです。」
最後に、この会社の今後の目標を聞いてみた。
「今はね溶接屋としてやらせてもらってますが、色々な発想の転換で溶接ができるんだったら、こういったことも手伝えるできるんじゃないかって多方面に踏み出していければいいなと思ってます。お客さんからも溶接ができるなら、切ったり曲げたりもできたら、前の工程からも出せるのにってそういうこともよく言われます。
溶接だけで生き残れるかはうちらにも分からないので、やってくれって言ってくれるお客さんがいるなら色々な事にチャレンジしていきたいです。
もっとモノづくりの色んなスタイルを身に着けていけたら会社的にはおもしろいんじゃないかと思います。」
溶接で一般的にイメージされる、飛び散る火花の中で溶接面を片手に持ち作業する光景は、自動化の波に押されてなくなりつつあるのかもしれない。熱くて危険だから今の時代やりたがる人が少ないのも仕方のないことなのかもしれない。
大量生産ができることも大事なことではあるが、ロボットではできないお客さんの要望に応えられるそういった技術にこそ本当の価値があり、今後は重宝されていくのかもしれない。
溶接は何も技術的なことだけじゃないと思う。
お客さんの要望に応えたり、一緒に働く仲間としっかりと向き合うことで、”しっかりと関係をくっつける”ことも自動化できることではない。そしてなにより、機械と対話する光景じゃなくて、こういった昔ながらの風景がなくなって欲しくないなと思う。