下町で働くということ 木村会計事務所
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ご応募ありがとうございました。
「今は会社がどんどん減って、特に若い人は起業しようと思わない。大企業が一人勝ちで、その周りの会社は潰れていって、今の若い人は会社を起こそうという気持ちが起こらないんですよね。そして、後継者もいない。子供がいても継ぎたくなかったり、子供がいないケースも多くて、そういったことが原因でどんどん会社は減っています。」
墨田区八広は、昔からある企業や工場が今でも数多く残る地域だが、このあたりでは廃業していくところが近年、後を絶たないそうだ。そんな中小企業に寄り添い、親身になって支援する会計事務所がある。
会計事務所や税理士事務所と聞くと堅苦しい印象を受ける方も少なくないと思うが、木村会計事務所は下町の雰囲気そのままのアットホームな事務所だ。
そんなこの下町の中小企業を長年支え続けてきた木村会計事務所で、さらにここを盛り上げていってくれる新しいスタッフを募集しています。
事務所に向かうために降りた最寄り駅は、京成曳舟(ひきふね)駅。
知らない人は読み方も分からないであろうこの駅は、まだ工事中の部分はあるものの高架工事により、駅舎が新しく綺麗になった。ここから住宅地へと歩いて5分ほどのところに、木村会計事務所はある。
事務所まで向かって行くと、昔から営業しているお店や建物が今でも数多く残り、行き交う人を見ているとこの地域で暮らす人々の生活が伝わってくる。第二次世界大戦による戦災を免れた地域でもあり、高いビルは少なく昭和の雰囲気を今でも残す懐かしい町並みが残る地域だ。
お話を聞かせていただいたのは、木村会計事務所の木村さん。
「基本的に、外回りは私一人が今はほとんどやっています。細かな雑務は従業員の方にお願いしていますが、顧問先の社長さんとお話しするといった私の仕事を少しづつやってもらえたらと思っています。」
今回の募集は、木村さんの片腕となるような人。
経験や資格は必要でしょうか?
「資格は必要ありませんが、税理士の勉強をそれなりにしてるとか、ある程度業界のことは分かっていて、少なくとも1年以上の経験のある方を求めています。理想としては、3年くらいの経験があって欲しいですね。」
具体的な仕事内容は?
「記帳ですとか、申告書作るとか、エクセルで資料作ったり、税金の届出書書いたりといった『事務作業』と『外回り』ですね。外回りはお客さんのところに行って、色んな資料の説明とか相談事を聞いてきたり、時には顧問先の社長さんとお話してどうゆう風に会社を経営すればいいのか、会社をいい方向に導いていってあげることもあります。」
こういった仕事はお客さんの業種も様々だが、何か大変なことや苦労することはないのだろうか。
「大変な部分ももちろんありますけど、基本的には帳簿や申告書をつける。大きな流れで言うと変わらないです。様々な業種の会社さんと関わることで、新しい事業の内容が分かるので、基本的には楽しいことの方が多いですかね。ただ、業種ごとの注意点はあるので、ある程度その会社についての勉強は必要ですね。」
ここで長年働く、藤沼さんにもお話を聞かせていただいた。
驚くことに藤沼さんは今年、80歳を迎えるが、足腰も元気で話しの受け答えもしっかりとされている。
実はこの会計事務所は、元々は藤沼さんのご主人が墨田区で30年近く開業されていた事務所だったのだが、13年前にご主人を急病で亡くされ、今は木村さんが引き継いでいるそうだ。
「私の娘が、先生の奥さんとたまたま英会話学校で知り合ったことがきっかけでした。その頃は、大手の監査法人にいらっしゃったんですけど、将来を考えて税理士の仕事をされたいと仰ってるということを耳にして、娘が誘ったそうです。」
「先生が引き継いでくださったのは4年前で、それまでは別の税理士さんに引き継いでもらって、何度も先生が変わったりもしたので、顧問先が減ってしまったりと苦労した時期でもありました。大手にいらっしゃったので悩まれたと思うんですけど、来てくれてほんとに大感謝です。」
お客さんの反応はどうですか?
「主人の時代には、パソコンもないような状態でも通用して、それでお客さんがついて来てくれました。でも、今はきちっとやらないと通らない社会です。そういう意味で、先生はこの時代にマッチして仕事されてるなって思います。こんなのどうでもいいのにって思うこともありますが、やっぱり違うんですよね。長い目で見るときちっとやってないとどっかで歪が出てきますから。」
「私自身も色々と探していた時期でタイミングが合ったんですね。誘っていただいた時はまだ勤めてはいましたが、独立も考えていたのもありましたから。」
前の会社とは環境が大きく違うが、戸惑いはなかったのだろうか。
「がらりと変わりましたね。以前は都心の大きなビルに入っている法人でしたが、ここは下町の人情味溢れるところですから。前の会社は少なくても何百人とか大きいと何千人を相手にしていたので、ここに来て見えなかった部分が見えるのはおもしろいですね。」
木村さんは、神戸市出身で41歳。東京に来て会計士や税理士としての仕事を始めて13年ほどになるそうだが、それまでは全く違う仕事をしていた異色の経歴を持っている。
「自分は、ニッカポッカ履いて建設の仕事とか大工さんとかとび職をしていたんですね。そもそも勉強したきっかけが簿記とかの資格を取りたいなって思って始めたんですが、その時は大学行ってなかったので高卒レベルだったんですね。アルバイトやったり、日雇いみたいな仕事してそういう仕事しながら、ちょっと簿記してみようかって。」
「その時は20代前半で、人生まだまだこれからなので資格があった方がいいなって思ったんですね。将来なにをしたらいいか分からなかったですし、肉体労働だけやるのも辛いなってのもありましたから。仕事しながら行ける通信の大学に行き始めて、一方で簿記の勉強を始めたところ試験に受かって、これは面白いなってことで会計士の資格を見つけて勉強を始めたのが25歳くらいですね。そして建設業の仕事はきっぱり辞めて、勉強に専念してから4年くらいかけて受かったという経緯です。」
下町で働いてみて、印象に残った出来事は?
「感謝されることが多いということですね。例えば、税務調査で税務署の人が来て、何百万何千万って税金を取られることがあるんですね。あまり慣れていないお客さんも多いですから、そういう時に不安になってこちらを頼って来られるので、色々とアドバイスさせていただいて、税務調査の不安を取り除いてあげたということですね。」
「また、経営のところでも相談を受けることも多く、会社がどういう風にやりたいかお聞きして、アドバイスさせていただくことで財務状況が良くなったと。不動産投資もそうですし、機械の設備投資もそうです。資金繰りの面で銀行さんから融資を受ける際に、こちらに相談に来られて一緒についていくこともあります。」
木村さんのところには、作業着や長靴を履いた方が『先生!』と相談にやって来ることも多い。ワイシャツにネクタイを着て来られる方は、藤沼さんの旦那さんの頃からも少なく、そういった敷居の高い場所にはしたくなかったそうだ。
「うちは別の税理士さんに断られた方も多くて、やっぱり引き受けてくれるところがなかったりする方もいるんですね。書類とかぜんぜん集まらないところもあって。でもそういうところをなんとか受けてあげたいって気持ちはありますね。」
仕事はどういった経緯で依頼されることが多いですか?
「繋がりが多いですね。顧問先の社長さんのお知り合いだとか私の知り合いとか、長いお得意さんが大半ですね。エリア的にはやはり墨田区のお客さんが多いですが、それ以外のお客さんも多くなってきていて、一番遠いところだと栃木県、神奈川県や都心の方もいらっしゃいます。」
大手の会社で働いていた木村さんから見て、この会社で働く魅力ってどんなところですか?
「やっぱり働きやすさが多いんじゃないですか。税理士事務所って都心に固まってることが多いんですよ。ああいうところだと、いわゆるサラリーマン的な働き方になっちゃうんですけど、ここだと下町的な感じで気持ちも緩やかに構えてできます。これは墨田の良さですよね。」
現在の従業員は、木村さんと藤沼さんの他に女性が2名。みなさん近所から通っていて、昼休みの休憩時間には自宅に一度戻って食事をしたり一休みしてから、午後の業務にあたっているそうだ。
「定時時間は9時~18時となっていますが、個人の都合に合わせて変動させることも可能です。お昼休みも1時間じゃ短いので1時半ほど取っていただいたりもしていて、職員のニーズやライフスタイルに合わせて働き方を選んでもらえたらと思っています。」
働きやすさの他にここではどんな経験が得られるのか、さらに詳しく聞いてみた。
「勉強もできる環境ではあるんですよ。うちのお客さんは上場会社もありますし、小さい会社もあって幅が広い。業種も飲食店、不動産、建設業、製造業、ITもありますので、そこは勉強できますし経験も積めるのかなと。研修やセミナーも本人の希望に応じて行ってもらうこともできます。そういった経験で将来的に独立してもらってもぜんぜんいいんですよ。定年まで一緒にいろとは全く思いません。」
この仕事のやりがいは?
「やはりお客さんに喜んでもらったり感謝されることがやりがいでしょうね。お客さんと一緒に何かを達成したり、契約できたりすることがやりがいでしょうね。最近は、この業界でも単価が下がっていますが、税理士は安ければいいという世界ではないんですね。その会社に合ったレベルの税理士と密接な関係を作ってやっていくのがいいと思うんです。」
どんな人がこの仕事には向いていますか?
「やっぱり真面目で明るい人ですね。コミュニケーションが必要な仕事ですから。あとはありきたりですけど一生懸命さ。なにより楽しくやってくれたらいいですね。」
書類を作るだけでなく、お客さんと話しをする仕事。
木村さんは、どんな方と働きたいんだろう。
「それなりに自己主張があってもいいと思うんですね。事務所をこう変えたいとかそういう主張をしてくれる方。アイデアを色々と出してくれるとありがたいですね。言われた指示を受けてやるだけではなくて、活性化しながら力を貸してくれたり、議論したりして頼もしい存在になっていって欲しいなと思います。放任ということではありませんが、ある程度本人がやりたいようにやってもらいます。もちろん相談受けたら乗りますが、自ら行動したら楽しい職場だと思いますよ。」
藤沼さんから見て、木村さんはどういった方ですか?
「このままです。今時めずらしい昭和の男性で、本当に真面目で誠実。それに大企業にいらしても零細企業に対して差別が全くないんですよ。大きなところと小さなところでぜんぜん差別がなくて、そこが素晴らしいところです。人間どっかで無意識に出るところってありますよね。お金のことですから。」
「だから、どなたかを雇われるってことになっても、すごく恵まれた環境で働けると思います。先生はキャリアを少し要求されていますが、こういう事務所の雰囲気や事務の仕事が好きな人で、人柄のいい人だったらまず先生と合わないという人はいないと思うんです。まあ、先生が我慢している部分があるかもしれないけど(笑)」
「やる気がある人だったら地味ですけど、勉強もできるし先生もすごい知識持ってるので、この会計の世界で生きていきたいって人には、どっしり腰を据えて働けるところだと思うんですよ。」
事務所の上は藤沼さんの住居になっている。
話の途中で、木村さんをこの事務所に誘った藤沼さんの娘さんが帰って来られて、こんなことを話してくれた。
「80歳になるまでしょうがなくじゃなく、母を雇用してもらって感謝しかありません。できる部分をやらせてもらって、母もおかげでこの歳までやりがい持ってできていると思います。」
最後に、木村さんに今後の目標を聞いてみた。
「仕事を増やしていきたいですね。どんどん会社数が減って、なおかつ税理士の仕事が機械化されて人がいらなくなってきていて、あまり先行きのいい業界ではないんですね。そして、単価も下がっています。業界的にはこのままいくと萎んでいくかもしれないので、徐々に大きくしていくような形を取らないと、生き残っていけないかなというのはありますから。」
「ワンストップ事務所って言うんですけど、税理士法人にして一つの事務所で何でも面倒みますよと。弁護士もいて、社労士もいて、司法書士もいて、行政書士もいて、仕業関係の一通りのことができる。それぞれが独立していて、お互いに相談もできて、お客さんも振り合ったりもできることで、たくさんの顧問先の面倒を見られるようになる。そんな形を目指していけたらと思います。」
藤沼さんのご主人がこの下町で長年かけて築きあげてきた関係と、中小企業を助けたいという意思を引き継ぎ、木村さんと一緒に新しい道を切り拓いていきたいという意欲的な方は、ぜひ応募してみてください。