2016.06.26(日)

いつまでも変わらぬ幸せ 名物人形焼 山田家

こちらの求人は募集が終了しました。
ご応募ありがとうございました。

山田家

昔も今も東京の定番のお土産と言えば、人形焼。
ふんわりとしたカステラ生地の中に、たっぷりのあんこ。シンプルなのに奥深い優しい和菓子です。

これを、60年以上作りづつけている会社が墨田区錦糸町にあります。

保存料、添加物を一切使用しないため、賞味期限は4日。
工場生産ではなく、毎朝ここで丁寧に焼き上げた作りたてを販売されています。

山田家

人形焼『山田家』は、安くておいしいものが食べたいというお客さんの要望に応え続けてきた会社です。時代に合わせ少しづつ味を調整しながらも、こだわり抜いた素材と変わらぬ手法を徹底して守り続けています。

シンプルだからこそ、ごまかしが利かない。
まさにそんなお菓子です。

今回の募集は、この人形焼を店頭で販売する仕事。特別なスキルは必要ありませんが、お菓子が好きな方、お菓子を仕事にしたい方は、ぜひ読んでみてください。

山田家

お店があるのは、錦糸町。墨田区でもっともにぎやかな場所です。
駅から徒歩2分、駅のほぼ向かい側に本店、そして駅の地下にも店舗があります。

まずは本店で二代目社長の山田昇さんに、お話を伺いました。

山田家

山田家は、山田さんのお父さんである先代が昭和26年に創業。
その頃は、両国で鶏卵卸問屋を営まれていました。

しかし、戦争が始まったのをきっかけに一旦お店を閉められました。その後、戦争が終わり両国での再開を考えたものの地代が上がってしまい、なんとか借りることができた錦糸町で、再び卵卸問屋を始められました。

「人形焼を始めたきっかけは簡単な理由で、錦糸町にだんだんと娯楽や人が集まりだして、問屋の倉庫として使っているにはもったいないと。それで、浅草の人形焼屋さんに卵を売ってたことからうちでもやろうって思ったみたいですよ。でも、そのうち卵屋さんが斜陽になって、お菓子の方が商売になるなんて、何がきっかけで世の中どう転がるか分からないですよね」

山田さんがこの会社を継いだのは、大学を出てすぐの47年ほど前だったそう。
昔からここを継ぐつもりだったのでしょうか?

「もう当たり前というか、学校が終わったらうちをやると。僕なんか中学の頃から手伝ってましたから」

はじめは、山田さんが人形焼と卵の卸のどちらの業務も担っていたが、弟さんが会社に入ったタイミングで、お菓子部門を任せる形で役割分担することになったそうだ。

山田家

本店の奥には製造工場が併設されており、ここで毎朝焼かれています。

販売スタッフに関しては、特に必要な経験や技術は必要ありません。3ヶ月の研修期間がありますが、製造部門を経験してもらうことはなく、完全に販売のみの形になります。ただし、柔らかく崩れやすいものなので、基本的な扱い方は覚えてもらう必要がありますが、ほとんどの方は2ヶ月ほどで大体のことはできるようになるそうです。

どんな方に働いてもらいたいですか?

「ただこなして帰る、お給料をもらえばいいという考えではなく、私がいれば少し周りが楽になるなとか、会社のために汗を流そう、そんな風に思ってくれる人がいればありがたいなと思います」

「もちろん人形焼が好きという方も大歓迎です。というのは、説明する時に違うでしょ。甘いものだめよって人が勧めるのと、甘いもの一日も欠かせない、みたいな人が説明するのとでは、やっぱり伝わり方が違いますよね」

山田家

職人さんがふっくらと焼き上げたカステラ生地は、生地だけで美味しくあんこなしでも販売するほどだ。中に入るあんこは、みずみずしくさっぱり。ついつい2個目、3個目と手が伸びてしまう。

この美味しさの秘密は、こだわり抜いた素材にある。

たまごかけご飯専用とも言われる奥久慈産の高級ブランド卵、北海道産のあずき、生地には蜂蜜が練りこまれています。さらに、水はアルカリイオン水が使われています。

「人形焼でここまでこだわってるところはないんじゃないかなと、私は自負しています。水道水のカルキ成分は消毒にはいいですが、香りを消してしまいます。ところが、電気分解してカルキを抜いた水だと卵やあんこの風味が消えずに残ります。それに、人形焼屋さんではちみつを入れてるところはなんてないと思いますよ」

こういった素材を使うことができるのは、商社的な一面を持っているからなんだそう。

もともと創業当時からの卵の卸は、現在も『株式会社 山七食品』という会社として、問屋さんから材料を直接仕入れることができる。だから、これまでに値段をほとんど変えることなく今でも手頃な価格で販売することができるそうだ。

「うちは問屋だから。要するに商売は、利は元にありというように、安く仕入れた物ってのは利益も厚いんですよ。だけど品物はいい物。砂糖屋さんや卵屋さんから買ったりすると、普通は問屋さんの利益が乗っちゃうけどそれがないんですよ。その点では、問屋をやってたからうちは恵まれてましたよ」

山田家

60年以上もこの錦糸町の地で営業してきた山田家だが、建物の老朽化により、2012年に少し場所を移動し、もともとパン屋さんだったところに新しく建て替えた。

「前はもう少し裏にあって、5年ほど前に建て替えたんですよ。ビルも60年くらい経ってて老朽化でインフラがぜんぜんだめになっちゃって」

このお店にとって錦糸町という場所に、強い想いやこだわりがあったのでしょうか?

「後から出ましたね。錦糸町っておもしろいなって。だから、建て替える時ももちろん、ここを動くつもりはなかったんですよ」

こだわりは場所だけではない。一緒に働くスタッフにも長く働いてもらいたいという想いがあり、比較的長く働かれる方が多い。しかし、以前は20年以上のベテランの方がいた頃に比べると、時代とともに少しづつ長く働ける方が少なくなってきたそう。

「ベテランの人はもういなくなっちゃったね。昔はうちが住まいから食事から全部持ってて、それこそ風呂敷一つで来て生活に困らない。でも今はそういう時代じゃなくて、ある意味で豊かになっちゃいましたから」

現在、販売スタッフは10名。
それでも長年働いてる方も多く、本店で店長を務める根津さんもその一人です。

山田家

本店では、常時2~3人態勢で店頭を運営されていて、日によって波があるものの、多い時は2000~3000個もの人形焼が出るそう。特に年末年始やお盆といった時期には、お土産やおもたせとして人形焼を求める方で、列ができることも少なくない。

利用するお客さんのほとんどは常連の方で、顔なじみの方も多いそう。近所の方が地元のお菓子としてお土産に持って行ったり、もらった方が買いに来てくれたり、田舎への贈り物だったりとニーズは様々。

「種類は少ないですが、商品の詰め方は細かいところがあって、作り置きしてないのでお客さまの好みに合わせて、注文をいただいてから手早く詰めないといけません。出来たものをただ販売するのではなく、要望をお聞きしてそれに合わせるといったことがちょっと大変かもしれませんね」

「また、人形焼といってもニーズによって対応が違うので、明るく元気でお客さまに合わせた接客ができる方がいいかなと思います。会話が多いので、話し好きというか誰とでも話せる方だとお客さまと仲良くなって話してると楽しいと思いますし」

山田家

お客さんのニーズに合わせて数や梱包の仕方を、その場で考えて対応する。それに加えてスピードも要求されるので、ある程度慣れるまでは大変かもしれません。

そんな今ではベテランの根津さん、実はここに来るまではあんこが苦手だったそう。

「ここに来るまではあんこは苦手でしたし、これまではついついスーパーの安い和菓子で間に合わせてたんですが、それと比べるとやっぱり違いますよね。うちのは、あんこがすごくさっぱりさらっとしてるので、ボリュームがあっても2個、3個食べられます」

「あんこの違いもだんだん分かるようになってきて、老舗のお店のあんこってそれぞれに特徴があると思いますけど、その中でもうちのはおいしいですね」

山田家

東京ソラマチや三越、高島屋などのデパートでも取り扱いがあるが、山田家の従業員が実際に販売する店舗は、『本店』の他に錦糸町駅にある『テルミナ店』の2店舗のみです。

錦糸町駅の地下にあるテルミナ店にも伺いました。
この日お店で販売を担当されていたのは、社員の佐々木さん。

山田家

佐々木さんは、もともとこのお店の常連で、仕事を探している時に偶然ここの求人を見つけて、好きなところで働けるということ、こういった販売の仕事をしたかったという理由から応募したそう。

そんな佐々木さんもここで働き始めて3年になり、今ではテルミナ店の店長を勤められています。

本店とテルミナ店は、ローテーションで回されており、基本的にこちらは1人体制。ただし、金曜日や雨の日、セールの時など、本店よりも忙しくなるような場合は、応援に行ったりと距離が近いという立地条件を活かして、臨機応変に対応されています。

もちろんいきなり1人ということはなく、徐々に慣れてきたらお客さんの少ない曜日や時間帯から慣れていってもらえたらということです。

主な仕事は、梱包、販売はもちろん、贈り物として発送を希望されるお客さんには郵送の手続きや、朝の掃除、陳列。また、本店とは違い、駅ビルに入居する店舗ということで、店長会議やマネジメントの研修といったことにも佐々木さんは参加されているそうです。

実際にここで働いてみてどうですか?

「ほとんどの方が長年働かれていて、ぜんぜんキャリアが違うので、みなさん仕事がとにかく早いです。でも、細かいところまで丁寧に教えていただけるし、社員とパートの仲もいい方で、プライベートで一緒に出かける人もいたりします」

佐々木さんは、今度は教える方の立場です。
どんな方と働きたいですか?

「やっぱり接客業なので、明るくできる方が一番だと思います。もちろん経験があるに越したことはないですが、私も未経験だったので、慣れてくればこなせるようになります」

割引サービスなどの売り出しの日には、お客さんがどっと押しかけてくることもあるそう。また、あんこがぎっしりと詰まった人形焼はずっしりと重みがあり、数百個入った箱を運ぶ作業は、見た目以上に重労働なんだとか。

山田家

佐々木さんにお話を伺っている間も、次から次へとお客さんがやってくる。その様子を見ていると、ひとりひとりお客さんの対応時間が非常に長い。

何を話していたのか、聞いてみる。

「うちのお客さまの特徴としては、お話しされる方が多いかもしれないですね。ここの人形焼が好きで紹介してもらってきたよとか、いつもここで買ってるよ、とかって会話をされるお客さまが多いので、おひとりおひとりの対応は、他のお店に比べると長めかもしれません」

これまでに印象的だったお客さんっていますか?

「私の印象が最初あまりよくなかったと思うお客さまがいらっしゃったんですけど、たまたま話した時に共通の話で盛り上がっちゃって、それからちょこちょこ私がいる時を狙ってきてくれたりしたのは印象的でした」

この仕事のやりがい教えてください。

「もともと好きな仕事だったので全部やりがいではありますが、お客さまと色々話すのももちろんですし、ありがとうって言われたりだとか、会いたくて来たよって言ってくださるお客さまもいて、そういうことを言われるとうれしいですよね」

山田家

ここの人形焼を買えるお店はごくわずかしかない。
その理由について、山田さんがこんな風に話してくれました。

「正直言うと、今の状態を充実していくほうがいいのかなと。というのは、どうしても他所へ出すと無理の行く時があるわけです。今の生産量っていうのが、比較的問題ない量なのかと思うので、あまり広めて不都合ができたりとか、品物が間に合わないというのはよくないので、今の状態にプラスアルファくらいが無難かなと思っています」

工場生産に切り替えると生産量は格段に増えるが、どうしても味が変わってしまう。そのため、生産量を倍や3倍にするのではなく、今の体制でできる限りの量を丁寧に作るようにしているそうだ。

「うちの方針としては、ぴったりで人を置かないようにしてるんですよ。1人でできることは1.5人くらいでやるような感じにしないと、負担が増えて重荷になってしまいます。なるべく1人の仕事を軽減できるようにしているのもあって、増やせないのもあります」

山田家

店舗を増やしてないのもそういった理由からでしょうか?

「そうです。増やすタイミングはいくらでもあったんです。人形焼に限らず他のところを見てると、今まで通りやってればこんな風にならなかったのになぁ、残念だなぁってのもあって、うちはうちで欲をかかないで、お客さま本位で作っていった方がいいのかなって気持ちが強いですね」

最後に60年以上続いてきた理由について、こんな風に話してくださいました。

「やっぱりこだわって作ってるからじゃないかなって思います。お客さまは材料のことまでは分からないかもしれませんが、単純にあそこのやつは安くておいしいよ、って思ってもらえてると思います。下町は値段が大事なんです。やっぱり売る人間が得ばかりしてたらだめで、買ってくれる方に得だと思ってもらわないと続かないんです」

山田家は、創業65年を迎える。
味を変えない、守り続けるというのは並大抵のことではない。これからも変わらず何年、何十年、何百年とこの場所からこの味を届けていく。
そのためのお手伝いをしたいと思う方は、ぜひ応募してみてください。

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